パソコンやスマホ、家電に自動車といった私たちの身の回りの便利なものには必ず半導体が使われています。
半導体市場は2023年は減少となりましたが、2024年さらに2025年はプラス成長が予測されており、今後も市場は拡大し続けています。
この記事ではそんな半導体の世界市場について、WSTSという世界の半導体市場に関する統計機関が発表している2024年春季版の結果を解説します。是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界の今後を知りたい
- 半導体関連企業の株を買いたい
動画で解説:2024年春季版 世界の半導体市場
WSTSとは半導体市場に関する世界的な統計機関
まずはじめに半導体市場の統計値を公表しているWSTSについて確認しましょう。
WSTSとは、WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICSの略称で、世界の半導体メーカが自主的に加盟している半導体市場に関する世界的な統計機関のことです。加盟している半導体メーカーは2024年現在で48社となっています。
市場統計予測値は原則年2回公表しています。例年春季版を6月頃、秋季版を11月頃となっています。
今回取り上げたデータは2024年6月4日に公表された春季データを用いています。
地域別半導体市場の推移
次に地域別の半導体市場の推移を確認していきます。
世界の半導体市場
世界の半導体市場全体としては、2023年は前年比-8.2%のマイナス成長でした。マイナス成長となるのは2019年以来4年ぶりのことでした。この要因としては、世界的なインフレや利上げ、地政学的なリスク要因の高まりによって個人消費や企業における投資に影響を及ぼしたためと考えられています。
しかし、2024年は前年比+16.0%、さらに2025年は+12.5%と市場は再び成長することが予測されています。あくまでも予測値ではありますが、2024年は過去最高を更新し、2025年はさらに市場拡大する見込みです。
地域別の構成比率は、2025年予測値で日本7.4%、米国28.1%、EMEA(欧州・中東・アフリカ)8.9%、アジア・太平洋55.7%となっています。
日本としては相対的に割合が下がっている状況で、アジア・太平洋が過半を占めている格好です。
日本の半導体市場
日本の半導体市場について確認しましょう。
日本市場はドルベースで、2024年は前年比-1.1%とマイナス成長です。2025年は前年比+9.3%とプラス成長予測となっています。
為替の影響もあり円ベースで、2024年は+4.6%、2025年は+9.3%の予測です。2025年はドルベースでも円ベースでも同じ成長率になっています。これは為替が安定している前提の数値となっています。
日本市場は過去25年間を見てみると、大きく減少している時期はありますが全体としては横ばいです。世界の半導体市場は上下しながらも拡大していますので、世界市場における日本の相対的な割合が減少している状況です。
近年は日本政府も半導体関連企業へ積極的な助成を進めていますので、今後の市場拡大に期待をしたいと思います。
米国の半導体市場
米国の半導体市場について確認しましょう。
米国市場は2024年前年比+25.1%、2025年は+14.8%と2年連続で二桁の大幅な成長が予測されています。2019年や2020年頃と比較して、2025年には2倍程度にまで拡大するようです。そのため日本市場と反対に世界における存在感が増している形です。
EMEA(欧州・中東・アフリカ)の半導体市場
EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の半導体市場について確認しましょう。
EMEA市場は2024年前年比+0.5%とほぼ横ばいですが、2025年は+8.7%とプラス成長予測です。過去最高を更新することが予測されています。
EMEA市場はほとんどが欧州地域ですが、2019年や2020年頃は日本市場と同じくらいの規模でした。しかし近年は少しその差が開いている形です。
アジア・太平洋の半導体市場
地域別の最後にアジア・太平洋地域の半導体市場について確認しましょう。
アジア・太平洋市場は2024年前年比+17.5%、2025年は+12.3%と2年連続で二桁の大幅な成長が予測されています。メモリを中心に2023年の落ち込みが大きかった部分がありますが、2025年はこちらも過去最高を更新することが予測されています。
製品別半導体市場の推移
次に製品別の半導体市場の推移を確認していきます。
WSTSでは半導体をICと非ICに大きく二分しています。
IC製品は2024年前年比+20.8%、2025年は+13.7%と2年連続で二桁の大幅な成長が予測されています。
一方で非IC製品は2024年が前年比-4.7%、2025年が前年比+5.5%の予測となっています。
全体の8割以上をICが占めているため、ICの成長が市場全体の成長を牽引している格好です。この後ではさらにIC、非IC製品の内訳をもう少し見ていきましょう。
IC製品別推移
IC製品はロジック、マイクロ、メモリ、アナログの4種類に分類されます。
- ロジック:ASICやFPGAなど
- マイクロ:マイコンやプロセッサなど
- メモリ:DRAMやフラッシュメモリなど
- アナログ:AD/DA変換や電源ICなど
2024年はアナログを除いてプラス成長です。特にメモリは2023年の落ち込みが大きかった反動もあり、前年比+76.8%という大幅なプラス成長予測となっています。
2025年は全般にプラス成長です。メモリは+25.2%と2024年に続いて二桁のプラス成長予測です。AI半導体向けに需要が高まっているHBMなどが牽引していると考えられます。
非IC製品別推移
非IC製品はディスクリート、センサ、オプトの3種類に分類されます。
- ディスクリート:パワー半導体など
- センサ:圧力センサ、ジャイロセンサ等
- オプト:LED、イメージセンサなど
2024年は全般にマイナス成長予測です。特にディスクリートとセンサは大きく減少しています。
2025年は全般にプラス成長予測ですが、過去最高であった2022年相当には届くか届かないかのラインです。IC製品と比較しますと成長が鈍化している形です。
製品別まとめ
最後に製品別のまとめです。
これまでみてきました通り、2024年はロジック、メモリ、マイクロがプラス成長予測、2025年は全般にプラス成長予測となっています。
その中でもメモリは市場の変動が大きいことが如実に表れています。いい時と悪い時がこれほどはっきりとなるため、メモリ工場は運営が厳しいことが容易に想像できます。
2023年は厳しい年になりましたが、2024年、2025年は半導体の需要はまだまだ拡大することが長期的に予測されています。今後の成長に期待していきたいと思います。
- 出典