高性能な半導体チップの製造には、高性能な半導体製造装置と共に半導体材料も欠かせません。
半導体製造装置と同様にニッチな分野ではありますが、重要な分野であり、かつ材料分野も日本企業が強い分野でもあります。
この記事では、最新の半導体材料市場規模と主要材料の市場シェアについてご紹介します。
ぜひとも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
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- 半導体業界に転職したい社会人
半導体材料メーカーについて動画で解説
半導体業界全体像の中での位置づけ
まずは半導体材料メーカーが半導体業界の中でどこに位置付けられているかを確認しましょう。
上図のように半導体材料メーカー各社は、半導体製造メーカーの各工程に必要となる材料を供給しています。
半導体製造メーカーは、自社で工場を持つ企業が該当し、ウエハ製造であればIDM企業とファウンドリ企業、組付け・検査であればIDM企業とOSAT企業です。
半導体材料メーカーにとって、半導体製造メーカーは顧客ですので発注してもらい供給することになるのですが、ここ数年は装置と同様に材料も需要が急増しており半導体材料メーカーの方が主導権を持っている場合もあります。
シリコンウエハなどは値上げや長期の数量契約などを材料メーカーと製造メーカー間で結んだりされています。半導体の需要が増加して装置や材料も需要が拡大していますが、各社が投資を含めてそれに対応しきれていないためです。
半導体材料とは
半導体製造にはシリコンウエハをはじめとしてフォトリソグラフィ工程に使用されるフォトマスクやフォトレジスト、エッチングや成膜に必要な各種のガスなどさまざまな材料が必要です。
主な材料として前工程で必要ものは以下のようなものがあります。
- シリコンウエハ
- フォトマスク
- フォトレジスト
- 各種の薬液
- 各種のガス
- スラリー
- スパッタターゲット
後工程では、以下のようなものがあります。
- リードフレーム
- モールド樹脂
- セラミックパッケージ
- 基板
半導体材料の市場規模
半導体材料の市場規模は2021年で643億ドルで約8兆円となっています。
2017年以降は拡大傾向が続いています。
地域別で見ますと、ファウンドリ企業最大手のTSMCとOSATの有力企業が集まる台湾が材料をもっとも使用しています。
また中国での使用も拡大傾向にあり、直近では台湾に続く規模となっています。台湾、中国に韓国と日本を加えた4か国で全体の7割以上を使用しているのが現状です。
各種の半導体材料市場シェア
シリコンウエハ
まずは半導体チップの元になるシリコンウエハについてみてみましょう。
シリコンウエハとは、IC(集積回路)を作り込むための薄い円盤状の単結晶基板です。
現在の主流サイズは12インチ(300mm)ウエハです。ただし8インチ(200mm)ウエハや6インチ(150mm)ウエハも使われています。
近年ではほとんど使われていませんが、古いラインや特殊な工程では5インチ(125mm)ウエハや4インチ(100mm)ウエハも使われていることがあります。
市場シェアは日本の信越とSUMCOが強く2社でシェアの過半を占めています。
3位の台湾グローバルウェーハズ、4位のドイツ シルトロニック、5位の韓国SKシルトロンの上位5社でほぼ市場を独占しています。
1位の信越化学工業は日本を代表する化学メーカーでシリコンウエハ以外の半導体材料ではフォトレジストも強い企業です。
2位のSUMCOは1999年に住友金属工業と三菱マテリアル、三菱マテリアルシリコンの共同出資によってできた企業です。当初は三菱住友シリコンでしたが、後に商号をSUMCOへと変更しています。この2社が日本の双璧です。
3位の台湾グローバルウェーハズはシノアメリカンシリコン傘下のシリコンウエハメーカーで、各社を買収して大きくなってきました。
日本では旧東芝セラミックを買収し日本法人としてグローバルウェーハズ・ジャパンを設立しています。
直近では4位のシルトロニックの買収にも動きましたが、これには失敗しています。積極的な攻勢を続けてシェアを拡大していますので、今後も注目の企業です。
フォトマスク
次はフォトマスクをみてみましょう。
フォトマスクとは、フォトリソグラフィ工程で使用されるウエハ上に回路パターンを形成するための原板のことです。
石英製の板で、表面の遮光幕に回路パターンが形成されております。内製している割合が高いですが、外販では日本の大日本印刷と凸版印刷が上位です。
凸版印刷は2022年4月からフォトマスク事業を分社化し、トッパンフォトマスク社を設立しています。
またフォトマスクの原材料となるマスクグランクスでも日本のHOYAなどが強く、日本企業がシェアの9割以上を占めています。
フォトレジスト
フォトレジストはフォトリソグラフィ工程でウエハ上に滴下される液状の感光性樹脂です。
フォトレジストをウエハに塗布してフォトマスクを使って露光、現像することで回路パターンを転写させます。
上図の通り、日本の大手5社で市場をほぼ独占しています。その中でもJSRと東京応化工業が最大手となっています。
薬液・ガス
薬液はウェット洗浄やウェットエッチングで使用されます。
フッ酸や硝酸、塩酸に過酸化水素、アンモニアなどの薬液が使用されます。かなり危険な薬液が多いです。
具体的な市場シェアはわかりませんでしたが、日本の大手メーカーが強い分野です。
ガスはドライ洗浄やドライエッチングで使用されます。またCVDなどの成膜工程でも使用されます。
酸素や窒素、アルゴン、水素などに加えて特殊なガスが多数あります。ドライエッチングでは削る素材によってさまざまなガスが使われています。
こちらも具体的な市場シェアはわかりませんでしたが、日本の大手メーカーが強い分野です。
スラリー
スラリーとは平坦化工程のCMPで使用される研磨剤のことです。
削られる素材に応じた物質を含んでおり、化学溶液と研磨砥粒によって削り、平坦にします。
市場シェアは米国キャボットが首位ですが、日本のフジミ、昭和電工マテリアル、富士フィルムも強い分野です。
スパッタターゲット
スパッタターゲットとは成膜方法のひとつであるスパッタで成膜する薄膜の素材として使用される材料のことです。
主に銅やタンタル、アルミ、チタン、タングステンなどが使用されています。ただし近年では原材料の金属価格が高騰しつつあり、供給がひっ迫しています。
市場シェアは日本のJX金属と東ソーの2社で過半を占めています。