半導体業界とはどんな業界でしょうか?
ここ数年、半導体不足やファウンドリの世界的な企業であるTSMCが日本に工場を作るなど、半導体に関連するニュースが頻繁に報道されています。
しかし半導体自体は黒子として、PCやスマホ、家電や自動車などのさまざまな製品に搭載されていますが、直接目に触れたり、購入する物ではありません。
この記事を読むと半導体業界における各メーカーや商社の役割と位置づけを理解できます。
ぜひとも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味関心がある
- 半導体業界に就職したい学生さん
- 半導体業界に転職したい社会人の方
半導体業界について動画で解説
半導体業界の全体像
半導体業界はとても広い業界です。
メインとなるのは素子やICを製造している半導体製造メーカー(デバイスメーカー)ですが、その半導体製造メーカーに製造装置を提供している半導体製造装置メーカーや材料を提供している半導体材料メーカー、さらにそれらの企業間を取り持つ半導体商社があります。
半導体製造メーカーは事業形態によって大きく4つに分けられます。
- IDM
- ファブレス
- ファウンドリ
- OSAT
この4つの事業形態については後述します。
ここでは、半導体業界を半導体製造メーカー、半導体製造装置メーカー、半導体材料メーカー、半導体商社の4分野を含んだ業界として定義します。
半導体業界の市場規模
半導体業界の市場規模としては、半導体製造市場としては約50兆円、半導体製造装置市場が約8兆円、半導体材料が約6兆円です。※2020年のデータ
合計すると約64兆円という巨大産業です。
そして今後も成長することが予測されている業界です。
経済産業省の資料によりますと、デジタル革命の進展に伴って今後も右肩上がりで成長することが見込まれており、2030年には100兆円の市場規模になるとのことです。
【驚異の成長率!】半導体市場 過去20年の地域別・製品別まとめ
半導体製造メーカーとは
半導体業界のメインとなるのが、半導体製造メーカーです。
事業形態によってIDMとファブレス、ファウンドリ、OSATの4つに分類できます。半導体素子製造という意味ではOSATは除く場合もあります。
IDMは、Integrated Device Manufacturerの略称で垂直統合型とも言われます。企画、開発から設計、製造、販売、サポートまでのすべてのビジネス機能を有する企業です。近年ではIDM企業は減少し、専業化が進んでいます。代表的なIDM企業は米国インテルや韓国サムスン電子などです。
ファブレスは、自社で製造工場を持たず製品の企画、設計、販売を行い、製造はファウンドリやOSATに委託する企業です。代表的なファブレス企業は米国エヌビディアやクアルコムなどです。
ファウンドリは、ウエハ工程の製造に特化した企業です。代表的なファウンドリ企業は台湾TSMCや中国SMICなどです。
OSATは、Outsourced Semiconductor Assembly Testの略で後工程と呼ばれる組付けと検査に特化した企業です。代表的なOSAT企業は台湾ASEや米国アムコアなどです。
ルネサスエレクトロニクスにように、自社で製造工場を持ちながら、先端プロセス工程の製造はファウンドリ企業に委託するファブライト戦略を取る企業もあります。
【半導体製造メーカーとは?】売上高ランキングと事業形態について解説
半導体製造装置メーカーとは
半導体の高性能化のためには、半導体製造装置の技術革新が必要です。
半導体製造装置メーカーは、フォトリソグラフィ工程に特化しているASMLや前工程全般をカバーしているAMATなどの巨大な企業からニッチ分野に特化した企業などがひしめきあっています。
【半導体製造装置メーカーとは?】売上高ランキングと市場シェアを解説
半導体材料メーカーとは
高性能な半導体材料も製造装置と同様に半導体の高性能化には欠かせません。
半導体グレードと呼ばれる極めて純度の高い、シリコンウエハやガス、薬品などでそれぞれの専門分野を持った企業がひしめきあっています。
【半導体材料メーカーとは?】市場規模と主要材料の市場シェアを解説
半導体商社とは
半導体商社は商社の中でも半導体製品を専門に取り扱う商社のことです。
半導体製造メーカーからICやLSIを買い付け、それを顧客である機械、電機、自動車などの各メーカーへ販売します。
とは言え、製品の横流しをしているだけではなく、半導体のカスタマイズや技術的なサポートも行っており、メーカーと同等の技術的な知識が求められます。
【半導体商社とは?】種類と利用メリット、日本の半導体商社を解説
半導体業界の年収は高い?低い?
半導体業界で働く人の年収はどのくらいでしょうか?
日本の平均年収はここ30年変わっていないと言われています。
国税庁の令和2年度民間給与実態統計調査によりますと、日本の平均年収は433万円です。
半導体業界ととしての平均年収を出している統計はありませんでしたが、製造業としては平均年収が501万円となっており、全体平均よりも高い値となっています。
個別企業でみてみますと、半導体業界でのベスト3は
- 1位:レーザーテック(1,310万円)
- 2位:東京エレクトロン(1,179万円)
- 3位:ソニーグループ(1,044万円)
となっています。上位3社はいずれも1,000万円を超えています。夢がありますね。
【企業別平均年収ランキング】半導体業界の年収は高いのか低いのか
半導体業界で働くためには
半導体業界で働くための方法は大きく3つあります。
まず大学生や新卒2,3年目の方であれば新卒の定期採用されることと第2新卒枠で採用されることです。
次にある程度の職歴がある方であれば、転職して働くことです。
この時のポイントは、業界か業種のどちらかを固定して一方のみを変える軸ずらし転職を行うことです。
このときには転職エージェントを利用することをおすすめします。
3つ目に主に製造現場で働くために工場派遣や期間工として働くという方法があります。
ここに抜け穴的な方法として期間工から正社員になるというルートがあります。
半導体と半導体業界について学ぶためのおすすめ本
どんな分野であれ、何かを学ぶときに有効な方法のひとつは読書です。
半導体について体系的に学びたいときも同じです。
半導体に関連する本は一般の方向けに書かれている本と、専門的な内容を扱っている本に分断されており初学者の方が読むべき本がわかりにくいと個人的に思っています。
これまでたくさんの半導体関連書籍を読んできた私がおすすめすべき本をピックアップしました。