半導体はスマホやパソコンはもちろん、我々の身の回りのものの多くに使われており、現代生活に欠かせないものです。
ここ数年で半導体の重要度の認識が広がりニュースや新聞などで取り上げられることも増えています。
そんな半導体業界の将来性を感じて就職や転職を検討している方がいると思います。またすでに半導体業界で働いていて、今後高い評価を得るために、資格取得を検討することもあるでしょう。
この記事では、半導体に特化した唯一の資格と言っていい半導体技術者検定の内容と勉強方法、最後に私の受験体験記をご説明します。
是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味関心がある
- 半導体を勉強したい学生さんや社会人の方
- 半導体業界に就職、転職したい方
動画で解説:半導体技術者検定とは?
半導体技術者検定とは
半導体技術者検定は一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会が実施する検定試験です。
半導体に特化した資格試験は目下のところ唯一と言っていいでしょう(技能士試験を除きます)。
試験は3級、2級、1級に分かれています。ただ2級が以下の3つに分かれており、このすべてに合格すると1級認定されます(1級の試験はありません)。
- 設計と製造
- 応用と品質
- パワーエレクトロニクス
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
試験はCBT方式(コンピュータを利用して実施する試験方式のことで、受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。)で実施され、試験期間内に全国各地にあります指定された試験会場を予約して受験します。
合格基準は45点満点中の31点ですので、大体70%以上で合格できます。受験料は学生が安くなっていますので、半導体業界に就職したい学生の方は受験することをおすすめします。
半導体技術者検定のメリットとデメリット
半導体技術者検定を受験するメリットとデメリットは何でしょうか?
メリットとしては、以下の3点です。
- 半導体業界に就職したいと考えている学生さんや、転職したいと考えている社会人の方であれば半導体を学ぶ意欲があることを証明できる
- 3級を取得すれば基本的な知識はあることを証明できる
- 2級であればその分野についてもう少し突っ込んだ知識があることを証明できる
一方でデメリットは、以下の2点です。
- 資格自体の認知度が低いこと(歴史が浅いこと、内容がマニアックであるため世間ではあまり知られていません)
- この資格を取らなければ従事できない業務はないこと(国家資格の業務独占資格や必置義務資格のようなものではないということ)
半導体技術者検定3級の内容と勉強方法
半導体技術者検定3級の対象者は以下のようになっています。
半導体設計・製造・品質管理に従事している方や半導体デバイスに関する基礎的な知識を身に付けたい方
そのため、検定で問われるレベルは
半導体の基礎、品質保証、半導体製品の分類、半導体の試験工程についての基礎的な問題
となっています。これから半導体業界に就職したい方や就職、転職したばかりの若手エンジニアの方が対象者として想定されます。
勉強方法としては、公式テキストと公式問題集が出ていますのでこの2冊を繰り返すことで対応することが可能です。
加えて公式に解説動画が出ていますので、こちらも合わせて見れば問題ないです。サンプル問題が公開されていますので、レベル感を確認したい方は、まずサンプル問題を解いてみましょう。
公式テキスト
解説動画
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式の解説動画はこちらからどうぞ。
サンプル問題
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式のサンプル問題はこちらからどうぞ。
日経クロステックコラムの解説付き問題はこちらからどうぞ。
半導体技術者検定2級の内容と勉強方法
半導体技術者検定2級の内容
半導体技術者検定2級は繰り返しになりますが、以下の3つの分野に分かれています。
- 設計と製造
- 応用と品質
- パワーエレクトロニクス
そのため対象者としては、
設計と製造:
半導体の設計、製造に従事されている方
応用と品質:
半導体を使用した機器の設計、アプリ開発、半導体の販売、品質保証業務等に従事されている方
パワーエレクトロニクス:
パワー系半導体の設計、製造、パワー系半導体を利用した機器設計、アプリ開発、販売、品質保証業務等に従事されている方
となっています。レベルは
それぞれの業務分野における、より専門的な知識、経験を問う問題
となっており、当然ですが3級よりもレベルが大きく上がっています。
半導体技術者検定(設計と製造)の勉強方法
勉強方法としては、こちらも公式テキストが発刊されています。
そのため全体のレベルを確認するためには公式テキストを使用することをおすすめします。
その上で参考文献として複数冊の書籍が公式ページで紹介されています。設計と製造では多くが設計の内容が問われていますので、参考文献も設計よりの書籍が多いです。
・「アナログCMOS集積回路の設計」
は広く使われている書籍ですが、レベルが高めですのでこれから勉強を始める方は、
・「LSI工学 システムLSIの設計と製造」
・「MOS集積回路の設計・製造と信頼性技術」
の方が初学者向けで理解しやすいです。
また3級と同じく公式の解説動画とサンプル問題も準備されていますので、合わせて利用しましょう。
公式テキスト
参考文献
解説動画
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式の解説動画はこちらからどうぞ。
サンプル問題
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式のサンプル問題はこちらからどうぞ。
日経クロステックコラムの解説付き問題はこちらからどうぞ。
半導体技術者検定(応用と品質)の勉強方法
勉強方法としては、こちらも公式テキストが発刊されています。
そのため全体のレベルを確認するためには公式テキストを使用することをおすすめします。
その上で参考文献として書籍とルネサスエレクトロニクスの信頼性ハンドブックが公式ページで紹介されています。
特にルネサスエレクトロニクスの信頼性ハンドブックは半導体の品質保証や信頼性、故障解析について詳細が書かれていますし、無料ですので一読の価値があります。
応用と品質も公式の解説動画とサンプル問題も準備されていますので、合わせて利用しましょう。
公式テキスト
参考文献
解説動画
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式の解説動画はこちらからどうぞ。
サンプル問題
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式のサンプル問題はこちらからどうぞ。
日経クロステックコラムの解説付き問題はこちらからどうぞ。
半導体技術者検定(パワーエレクトロニクス)の勉強方法
勉強方法としては、こちらも公式テキストが発刊されています。
そのため全体のレベルを確認するためには公式テキストを使用することをおすすめします。
その上で参考文献として複数冊の書籍が公式ページで紹介されています。
その中でも初学者向けとしては「パワーデバイス」をおすすめします。
パワーエレクトロニクスも公式の解説動画とサンプル問題も準備されていますので、合わせて利用しましょう。
公式テキスト
参考文献
解説動画
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式の解説動画はこちらからどうぞ。
サンプル問題
一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会公式のサンプル問題はこちらからどうぞ。
日経クロステックコラムの解説付き問題はこちらからどうぞ。
半導体技術者検定1級の申請方法
半導体技術者検定1級は2級の3分野にすべて合格された方が申請によって認定されるという仕組みです。
申請方法は公式ページにあるように3分野の認定番号と申請費用、顔写真を用意することで可能です。
詳細は公式ページをご確認下さい。
半導体技術者検定受験体験記
少し古いですが、私は2019年に半導体技術者検定3級を受験しました。
バックボーンとしては、大学時代は電気電子系の学部で大学院の修士課程で半導体系の研究室、就職後は半導体プロセスエンジニアとして約10年の経験がありました。
そのため、3級であれば比較的簡単に受かるだろうと高を括っていました。
ただ、内容が広範囲にわたり普段の業務では使用しない個々のデバイスや試験の知識はほとんど一からの勉強になりました。
勉強方法は上述したように公式テキストと公式問題集を繰り返すことで9割以上は解けるレベルに達しました。
試験はCBT方式ですので、試験会場で解き終わったすぐに合否がわかります。これは合格発表まで待たされないという意味でストレスがないです。無事に合格し、後日自宅に認定証が届きました。
受験した感想としては、やはり学生さんや若いエンジニア向けの試験だと感じました。また実際の試験は公式問題集よりは少し難しい内容であるという印象でした。
2級についても公式テキストを買って一読しましたが、私の場合は試験を受ける必要性がないと判断して受験しておりません。
ただ、2級であれば割と難しい問題もありますので、もう少し勉強して受験してもいいかなと考えています。
まとめ
半導体技術者検定についてご説明しました。
半導体業界は多少の浮き沈みはあるにせよ、将来的にまだまだ伸びていく業界です。
半導体について学び、半導体業界に就職、転職したいと考えてみる方の一助となれば幸いです。