2024年は年明けから株式市場が好調です。
その中でも米国エヌビディアが牽引する形で半導体関連企業の上昇が目立っており、国内企業もその恩恵を受けている企業がたくさん存在しています。
2024年の3月には日経半導体指数というインデックスが誕生しています。
この記事では、その日経半導体指数についての概要と全30の構成銘柄についてみていきます。
ぜひとも最後までご覧ください。
- 半導体に興味関心がある
- 半導体関連企業に株式投資をしたい
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
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日経半導体指数は東証に上場する半導体関連銘柄で構成される指数
日経半導体指数とは、東京証券取引所に上場されている主要な半導体関連銘柄から構成される指数(インデックス)のことです。
SOX指数(フィラデルフィア半導体指数)の日本版と考えるとイメージしやすいです。
指数を構成する対象銘柄は全部で30銘柄であり、入れ替えは年に1回予定されており、11月末となっています。
指数は時価総額ウエート方式で算出され、計算頻度は1日1回の終値ベースとなっています。
2024年3月25日から公表が開始されており、基準日は2011年11月30日で、基準値が1000です。
日経半導体指数の全30銘柄
日経半導体指数は全30銘柄で構成されています。
ただし2024年4月にJSRが産業革新機構によるTOBの結果、将来的に上場廃止の可能性が高くなったため、5月1日から除外されます。
大きな分類として、以下の4つに分類できます。
- 半導体メーカー
- 半導体商社
- 半導体製造装置メーカー
- 半導体材料メーカー
ただしそれぞれ、半導体事業を本業にしているメーカーもあれば、全体の中の一部門として半導体関連事業を手掛けているメーカーもありますので、注意が必要です。
日経半導体指数の全構成銘柄:半導体メーカー
ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクスは、自動車向けや産業向けのマイコン、アナログ半導体、パワー半導体が主力の半導体専業メーカーです。
日立製作所と三菱電機、NECの半導体事業が統合して誕生した企業で、かつては業績不振に陥り非常に厳しい状況でしたが、近年は積極的な買収攻勢などによって業績が回復して、高収益企業となっています。
最近では2024年2月に設計ツールベンダーであるアルティウムを約9000億円で買収すると発表しています。
ソニーグループ
誰もが知っていると言っても過言ではないソニーグループですが、ソニーは半導体事業も手掛けています。
CMOSイメージセンサに強みを持っており、世界シェアトップとなっています。みなさんが使っているスマホのカメラは多くがソニー製かもしれません。
TSMCが熊本に設けた工場(運営会社JASM)にも出資をしており、イメージセンサ用のロジック半導体安定調達を進めています。
ローム
ロームはパワー半導体とアナログ半導体が主力の半導体専業メーカーです。
近年ではパワー半導体、その中でも特にSiCパワー半導体に注力をしており、シェア拡大に向けて宮崎県の旧ソーラーフロンティア国富工場の建屋を取得して、SiCパワー半導体ラインへの転用を進めています。
また東芝との協業を進めており、経済産業省からの多額の助成金獲得に成功しています。
ソシオネクスト
ソシオネクストは富士通とパナソニックのSoC事業が統合してできた企業です。
そのため、社歴としては浅いですが、2022年10月に東証プライム市場への上場を果たしています。
日本では数少ないファブレス企業で、多くの製品をTSMCへ製造委託しています。自動車とデータセンター、スマートデバイスの3つの分野に注力しており、3-7nmの先端プロセス品の開発、設計を手掛けています。
サンケン電気
サンケン電気はパワー半導体、パワーモジュール、センサを手掛ける半導体専業メーカーです。
特に自動車向けが売上の過半を占めており、今後BEV(電気自動車)の市場拡大に向けて増産体制の構築を進めています。
2024年1月の能登半島地震では子会社の石川サンケンが被災をしましたが、3月末までに全面的な生産再開の目途が立ったとしています。
日経半導体指数の全構成銘柄:半導体商社
マクニカホールディングス
マクニカホールディングスは、マクニカと富士エレクトロニクスが経営統合して誕生した半導体商社です。
売上高が1兆円を超えており、国内トップ、世界でも5位の独立系商社です。
売上高の9割を半導体事業が占めており、残りはネットワーク事業となっています。
加賀電子
加賀電子は独立系の大手半導体商社です。
半導体を中心とした電子部品、情報機器、ソフトウェア事業を手掛けていますが、電子部品事業が売上高の9割近くを占めています。
今後は2025年に売上高7500億円、さらに2028年には売上高1兆円を目指すという中長期経営計画を掲げています。
東京エレクトロンデバイス
東京エレクトロンデバイスはその名の通り東京エレクトロングループの企業で、半導体商社です。
半導体及び電子デバイスとコンピュータシステム事業を手掛けており、売上高の9割近くを半導体及び電子デバイス事業で占めています。
売上高に占める半導体事業の割合は他の商社と同じような形になっています。
日経半導体指数の全構成銘柄:半導体製造装置メーカー
東京エレクトロン
東京エレクトロンは日本を代表する半導体製造装置メーカーです。
売上高で国内トップ、世界でも4位の企業で、前工程から後工程までの幅広い装置をカバーしています。
特にフォトリソグラフィ工程で使用されるコータ/ディベロッパは世界シェア約9割と圧倒的で、その他にもドライエッチング装置や成膜装置、洗浄装置、ウエハプローバなどで高シェアを持っています。
アドバンテスト
アドバンテストは売上高で国内2位、世界6位の半導体製造装置メーカーです。
半導体の電気特性を試験するテストシステム(テスタ)が主力で、テスタ市場を米国テラダインを二分する形で、シェアの過半を占めています。
GPUやHBMと呼ばれる高性能メモリなどの生成AI用デバイスのテストプラットフォームも持ち、さらには3Dなどの先端パッケージ用テスト技術も持つ企業です。
SCREENホールディングス
SCREENホールディングスは売上高で国内3位、世界7位の半導体製造装置メーカーです。
ウエハを洗う洗浄装置に強みを持ち、枚葉式洗浄装置で世界シェア33%、バッチ式洗浄装置で世界シェア48%と高いシェアを持っています。
洗浄工程は微細加工を行う半導体の前工程において3割程度を占める重要な工程です。
ディスコ
ディスコは売上高で国内6位、世界13位の半導体製造装置メーカーです
ウエハをチップに切り分けるダイシング装置、ウエハを薄く削るグライダ装置、ウエハ表面を磨くポリッシング装置に強みを持っています。ダイシング装置では市場シェアの7,8割を占めるとされています。
SiCやGaNなどのパワー半導体材料向けの装置開発も進められています。
TOWA
TOWAは半導体製造装置の他に金型やファインプラスチック成型品を手掛けるメーカーです。半導体事業が売上高の約8割を占めています。
ウエハから切り分けられたチップを樹脂封止するモールド工程に使用されるモールド装置に強みを持つ企業です。コンプレッション形成方式という独自技術を確立しており、生成AIに必須なHBMと呼ばれる高性能メモリの量産にも採用されいます。
ローツェ
ローツェは半導体やディスプレイ、ライフサイエンス関連の自動化、搬送装置を手掛けるメーカーです。半導体関連装置が売上高の8割以上を占めています。
半導体製造装置メーカー向けに搬送ロボットやロードポート、真空プラットフォームを提供しており、半導体メーカーにはウエハソータやストッカを提供しています。
アルバック
アルバックは真空技術をベースにして、半導体やディスプレイ、産業機器向けの装置を手掛けるメーカーです。売上高のおよそ1/3を半導体及び電子部品製造装置事業が占めています。
主力装置として成膜を行うスパッタリング装置や蒸着装置、さらにエッチング装置やアッシング装置などです。直近の受注高はSiC投資の活発化によってパワー半導体が増加しています。
フェローテックホールディングス
フェローテックホールディングスは半導体製造装置向けの真空シールで世界シェア7割弱を持つメーカーです。
その他には石英製品やセラミックス製品、シリコンウエハや再生ウエハなども手掛けています。
半導体装置関連事業で売上高の約6割を占めています。
レーザーテック
レーザーテックは光技術を用いた検査・計測装置を手掛ける半導体製造装置メーカーです。
フォトマスクの材料となるマスクブランクス検査装置やフォトマスク検査装置、SiCなどのウエハ検査装置を手掛けています。
特にフォトマスク、マスクブランクス検査装置ではEUV露光用で世界唯一の装置や高シェア装置を持っています。
東京精密
東京精密は精密測定機器や半導体製造装置を手掛けるメーカーです。売上高の7割以上を半導体製造装置が占めています。
ウエハプローバやダイシング装置、グライダ装置、CMP装置などをつくっています。直近でも新たな工場を立ち上げて生産能力の拡大を進めています。
日経半導体指数の全構成銘柄:半導体材料メーカー
信越化学工業
信越化学工業は日本を代表する総合化学メーカーの一社です。
半導体関連材料で言いますと、シリコンウエハは世界シェアトップ、フォトマスクとマスクブランクスで世界シェア2位となっています。
その他にはGaAsなどの化合部半導体材料や封止材料、ウエハ搬送容器なども手掛けています。
SUMCO
SUMCOはシリコンウエハ専業メーカーです。
信越化学工業に次いで世界シェア2位で、特に最先端ロジック分野では世界シェアトップとなっています。
近年では佐賀県の伊万里市にある久原工場内に結晶工場を整備、吉野ヶ里町には新たな加工工場を建設予定となっており、生産能力の拡大を進めています。
トクヤマ
トクヤマは電子先端材料、化成品、セメントなどを手掛ける化学メーカーです。電子先端材料事業が売上高の25%を占めています。
シリコンウエハ用の高純度多結晶シリコンを製造しており、他にはドーパント用の高純度ボロンや洗浄工程で使用されているIPA、CMP用のシリカなどをつくっています。
JSR
JSRは合成ゴムの国産化を目指して設立された元国策企業で、現在は民間の化学メーカーとなっています。
半導体材料やライフサイエンス、合成樹脂事業を手掛けており、フォトレジストは世界シェアトップクラスとなっています。
2023年に産業革新機構によるTOBが発表され、2024年3月からTOBが実施され、今後上場廃止となる見込みです。
東京応化工業
東京応化工業はフォトレジストに強みを持つ化学メーカーです。
フォトレジストなどのエレクトロニクス機能材料と高純度化学薬品を手掛けております。2022年のフォトレジスト出荷ベースで世界シェアトップとなっています。
熊本県や福島県に製造工場を建設しており、生産能力の拡大を進めています。
住友ベークライト
住友ベークライトはその名の通り、住友化学の持分法適用関連会社の化学メーカーです。
半導体関連材料、高機能プラスチック、クオリティオブライフ事業を手掛けており、半導体関連材料事業が売上高の3割弱を占めています。
チップを封止するモールド工程で使用される封止用エポキシ樹脂材料が強く世界シェアトップとなっています。
日本化薬
日本化薬は日本初の産業用火薬メーカーとして設立され、その後事業拡大を共に現在の社名に変更されています。モビリティ&イメージング、ファインケミカル、ライフサイエンス事業を手掛けています。
半導体封止用のエポキシ樹脂や硬化剤、プリント基板用のエポキシ樹脂や硬化剤などを製造しています。
トリケミカル研究所
トリケミカル研究所は電子工業用の高純度化学薬品メーカーです。社名が研究所となっていますが、あくまでもメーカーです。
絶縁膜関係のHigh-K材料や強誘電体、配線用の化合物、バリアメタル材料などを手掛けており、他にもエッチング用ガスやイオン注入用の化合物材料などを製造しています。
ADEKA
ADEKAは旭電化工業から2006年に社名変更した化学メーカーです。旭電化工業を省略してアデカということでしょうか。
化学品、食品、ライフサイエンス事業を手掛けており、化学品の中の情報・電子化学品事業は売上高の約9%を占めています。
半導体メモリ向けの高誘電材料では世界シェアトップとなっており、他にはエッチング用ガスやCVD用材料、銅めっき液なども製造しています。
太陽ホールディングス
太陽ホールディングスはプリント基板に使用されるソルダーレジストに強みを持つ化学メーカーです。
エレクトロニクス、医療・医薬品、ICT&S事業を手掛けており、エレクトロニクス事業が売上高の約7割を占めています。
主力のソルダーレジストでは世界シェアトップとなっています。
デクセリアルズ
デクセリアルズは元々ソニーケミカルとして設立され、その後独立して現在の社名に変更された化学メーカーです。
光学材料や電子材料部品を手掛けており、異方性導電膜や熱伝導シート、光通信用デバイスなどを製造しています。
2022年には光半導体を手掛ける京都セミコンダクターを買収して子会社化しています。
HOYA
HOYAは光学ガラス専門メーカーとして設立され、その後周辺事業へ領域を拡大している材料メーカーです。
ライフケア、情報通信分野を手掛けており、情報通信分野のエレクトロニクス事業は売上高の約3割を占めています。
半導体用のマスクブランクスは世界シェアトップとなっており、特にEUV向けのマスクブランクスは8割近いシェアを持っています。
日経半導体指数まとめ
- 日経半導体指数は東証に上場している半導体関連銘柄から構成される指数
- 対象は半導体関連の30銘柄(ただしJSRは除外された)
- 半導体メーカー5社
- 半導体商社3社
- 半導体製造装置メーカー10社
- 半導体材料メーカー12社
- 出典
-
日本経済新聞社:日経半導体指数