2025年3月に半導体業界で生じたニュースを13本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2025年3月号
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2025年3月末時点の半導体関連株式市場推移

各ニュース記事:半導体業界ニュース2025年3月号
TSMC、米国での先端半導体製造投資に1,000億ドル追加へ

TSMCは3/4、米国における先進半導体製造への投資をさらに1,000億ドル(約15兆円)拡大する意向を発表しました。
同社は既にアリゾナ州の工場建設に650億ドルを投資しており、投資総額は1,650億ドルとなります。これは米国史上最大の単一直接投資になるということです。
新規投資の内訳は3つの新たな半導体工場と、2つの先端パッケージング工場、研究開発拠点となっています。また今後4年間でおよそ4万人の建設関連雇用が創出され、さらに先進的なチップ製造や研究開発の分野で数万人の雇用が創出されると見込まれています。
AppleやNVIDIA、AMD、Broadcom、Qualcommなどの同社の主要顧客をサポートしていくとしています。
TSMCによる巨額の米国投資が発表されました。同社のC.C. Wei CEOがホワイトハウスでトランプ大統領と共同で公表しました。政治的な部分も色濃く感じますが、TSMCの影響力が国際政治にも大きく出ていることの証左とも言えそうですね。それにしてもすごい金額です。
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TSMC:プレスリリース(3/4)
東芝、姫路半導体工場のパワー半導体後工程新棟が竣工

東芝は3/5、姫路半導体工場において車載向けパワー半導体の後工程新製造棟の竣工式を行ったと発表しました。
新棟では、製造工程の自動搬送による省人化、RFIDタグ導入による作業性の改善や在庫管理精度向上を通したスマートファクトリー化を推進するとしています。
今後、装置搬入が進められ2025年上期から本格的な生産が開始される予定となっています。
この新棟の稼働開始によって同工場の車載向けパワー半導体の生産能力を2022年度比2倍以上に増強されます。
2022年末に公表されていました東芝の後工程新棟が完成した模様です。車載向けパワー半導体は直近停滞気味ではありますが、車両の電動化需要は将来的に回復するとみられていますので、今後に期待ですね。
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東芝:プレスリリース(3/5)
インテル、リップ・ブー・タン氏を新CEOに任命

インテルは3/12、取締役会が3/18付でリップ・ブー・タン氏を最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表しました。
同氏は現在のマレーシア出身で、シンガポール南洋大学で物理学を学び、マサチューセッツ工科大学で原子力工学の修士号を取得、さらにサンフランシスコ大学でMBAを取得されています。
投資ファンドなどを経て、ベンチャーキャピタルを設立しており、その後、EDAメーカー大手であるケイデンス・デザイン・システムズの取締役に就任し、2009年から2021年まではCEOを務めています。
インテルの取締役も2年間務めており、2024年8月に辞任していますが、今回CEOとして取締役に復帰することとなります。
インテルの新CEOが決定しました。半導体業界で長年の経験を持つ方が就任されるということです。今後のインテルをどのように導いていくのか注目ですね。
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インテル:プレスリリース(3/12)
産総研、SiC CMOS駆動回路内蔵モジュールによるモータ駆動を実証

産業技術総合研究所は3/12、明電舎と共同でSiC CMOS駆動回路を内蔵したSiCパワーモジュールによるモーター駆動を世界で初めて実現したと発表しました。
SiCパワーデバイスはSiと比較してエネルギー損失を少なくすることができるため、EVやハイブリッド車のモータードライブ制御などの分野で応用が進められています。しかし現在の駆動方法では高速スイッチングを行うとノイズによる誤動作のリスクがあり、極めて低速なスイッチング動作でしか用いられておらず、SiCパワーデバイスの本来の性能を引き出しているとは言えない状況です。
そこで産総研と明電舎では、産総研が過去に開発しているSiC CMOS駆動回路を用いることによりノイズを低減させ、誤動作しやすい現行のパワーデバイス用ドライバーと組み合わせても、SiCパワーデバイスの高速スイッチング動作が可能なことを実証しました。
スイッチング波形として、オフ状態からオン状態へのスイッチ(ターンオン波形)と、オン状態からオフ状態へのスイッチ(ターンオフ波形)の速度は、それぞれ72 V/nsおよび85 V/nsであり、これは現行のSiCパワーモジュールのスイッチング速度と比較して約10倍高速です。これはすなわち発生するスイッチングロスをおよそ10分の1に低減できることを意味しています。
今後はモーターシステムの省エネルギー性能の実証、スイッチング動作のさらなる高速化に取り組むとしています。
SiCを使ったCMOS回路でパワーデバイスを駆動させることができる点を初めて知りました。SiCパワーデバイスの性能を最大限に引き出すためにもこの技術が普及していき、EVやハイブリッド車の航続距離が伸びていくといいですね。
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産業技術総合研究所:プレスリリース(3/12)
三菱UFJ銀行とふくおかFG、九州半導体フォーラムを共同開催

三菱UFJ銀行とふくおかフィナンシャルグループは3/17、福岡県にて九州半導体フォーラムを3/14に共同開催したと発表しました。
このフォーラムには国内半導体関連企業97社が参加しています。
フォーラムの第一部では「国内半導体産業のサステナブルな成長実現に向けて」をテーマにセミナーやパネルディスカッションを行い、第二部では立食式ネットワーキングを開催し、イベント参加企業間における情報交換や交流を深める場を提供したということです。
メガバンクと九州の金融機関による半導体関連のフォーラムが開催されたということです。金融機関においても専門の部署が設けられるなど半導体産業の競争力強化、サプライチェーン強靭化に向けた取り組みが進んでいるようです。
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三菱UFJ銀行:プレスリリース(3/17)
ふくおかフィナンシャルグループ:プレスリリース(3/17)
JX金属、東証プライム市場へ上場

JX金属は3/19、東京証券取引所プライム市場に新規上場したと発表しました。
売出価格は820円でしたが、初値は843円となっており、時価総額はおよそ7,800億円です。同社はENEOSホールディングス子会社でしたが、上場によって親子関係を解消しています。
JX金属グループ2040年長期ビジョンの中で、「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身により、激化する国際競争の中にあっても高収益体質を実現し、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針として掲げています。
JX金属はスパッタ用ターゲットで高いシェアを持っています。今後は、半導体材料・情報通信材料事業を中心とする成長投資を優先する方針ということですので楽しみですね。
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JX金属:プレスリリース(3/19)
JIC、新光電気工業へのTOBが成立

JIC(産業革新投資機構)は3/19、新光電気工業のTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表しました。
今回のTOBは2/18から3/18の買付期間で実施され、買付予定数の下限である2,249万1,200株を上回る5,928万1,400株の応募がありTOB成立となりました。
今後は2025年6月を目途に非上場化される見込みです。
新光電気に対するTOBが成立しました。メインはJICですが、大日本印刷と三井化学も出資していますので、非上場化されてからのどういった体制になるのか注目ですね。
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JIC:プレスリリース(3/19)
ソフトバンクグループ、半導体設計の米国Ampereを65億ドルで買収へ

ソフトバンクグループは3/20、半導体設計の米国Ampere Computingを総額65億ドル(約9,730億円)の現金取引で買収すると発表しました。
Ampereは元インテルのRenée James氏によって2018年に設立された企業で、AIコンピューティング向け半導体の設計を行っています。
買収後はソフトバンクグループの完全子会社として運営を継続し、その名称も維持するということです。
今後は規制当局の承認を含む通常の完了条件に従い、2025年後半に手続きが完了する見込みです。
ソフトバンクグループが米国の半導体設計企業を買収します。AmpereはArmベースのプロセッサ設計を行っており、ソフトバンクとしてはArmの設計力を補完する形でAIインフラ分野への投資を進めるようです。
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ソフトバンクグループ:プレスリリース(3/20)
ラピダス、クエストグローバルと戦略的パートナーシップを締結

ラピダスは3/25、グローバルクエストと戦略的パートナシップのMOS(協力覚書)を締結したと発表しました。
今回の提携によってラピダスはクエストグローバルの新しいファウンドリーパートナーの1社となり、クエストグローバルの顧客はラピダスの2nmGAA製造プロセスを選択できるようになるということです。
クエストグローバルは1997年に設立、半導体や自動車、鉄道、エネルギー、医療などの分野で製品設計や開発を支援するアウトソースサービスを提供する企業です。
ラピダスの課題の一つとして顧客の獲得があります。今回の提携もその一環ということでしょう。顧客獲得がまた一歩進んだと思われます。
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ラピダス:プレスリリース(3/25)
浜松ホトニクス、新貝工場に新棟完成し後工程生産能力を増強

浜松ホトニクスは3/26、光半導体素子の後工程における生産能力増強のために建設した新貝工場の新棟が完成し、5月から稼働を開始させると発表しました。
半導体製造や検査装置向けのイメージセンサ需要拡大が続いており、今後も売り上げ増加が見込まれていることから、今回、新貝工場に新棟を建設し後工程の生産能力を増強を図ったということです。
新貝工場の3棟目となる建屋で、既存の2棟と接続してクリーンルームは一体化されています。また、今回の新棟建設により、新貝工場での大型設備投資は完了としています。
同社では前工程の能力拡充も進められており、10年後には光半導体事業の売り上げを倍増させるとしています。その一環として今回は後工程の生産能力が増強されたということです。今後の事業展開が楽しみですね。
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浜松ホトニクス:プレスリリース(3/26)
マツダとローム、GaNパワー半導体を用いた自動車部品の共同開発を開始

マツダとロームは3/27、次世代半導体として期待されるGaN製パワー半導体を用いた自動車部品の共同開発を開始したと発表しました。
両社では、2022年より電動駆動ユニットの開発・生産に向けた協業体制において、SiC製パワー半導体を搭載するインバータの共同開発を進めており、今回、新たにGaN製パワー半導体を用いた自動車部品の開発にも着手したということです。
GaNは従来のSiを使ったパワー半導体と比較して電力変換に伴う損失を抑えることができ、さらに高周波駆動によって部品サイズを小型化できます。
今後は2025年度中にそのコンセプトの具現化とデモ機によるトライアル、そして2027年度の実用化を目指すとしています。
マツダとロームが共同でGaN製パワー半導体を使ったインバータの開発に乗り出すということのようです。2027年度の実用化を目指すということで、あまり時間はありません。自動車部品は信頼性の認証等々が大変ですのでタイトな開発スケジュールになりそうですね。
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マツダ:プレスリリース(3/27)
ローム:プレスリリース(3/27)
アオイ電子、シャープ三重事業所第1工場を取得

アオイ電子は3/31、シャープ三重事業所の第1工場の売買契約を締結したと発表しました。
同工場は三重県多気郡多気町に位置しており、延床面積は約60,000㎡、生産エリアは約24,000㎡となっています。
今後の事業展開を踏まえて第2工場の取得も検討しているということです。
シャープとしては未利用・低利用となっている工場の活用や売却、他社協業による事業展開によって事業構造の転換を進めており、今回の工場売却はその一環です。
アオイ電子は資金調達も行っており、量産工場が確保できたため、先端パッケージ事業などを2027年度に本格稼働させるとしています。
アオイ電子は2024年にシャープ三重事業所を活用して生産ライン構築をすると発表していましたが、さらに踏み込んで工場取得となったようです。今後は第2工場の取得も検討としていますので、恐らくは取得に向けた話が進んでいると想像されます。
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アオイ電子:プレスリリース(3/31)
シャープ:プレスリリース(3/31)
経産省、ラピダスに2025年度は最大で8,025億円の支援を決定

経済産業省は3/31、ラピダスに対して2025年度に最大8,025億円の追加支援を行うことを決定したと発表しました。
今回の追加支援によってラピダスに対する委託研究予算は最大で1兆7,225億円となります。
2025年度の開発内容としては前工程に関しては、先行顧客向けのPDKリリース、IIM-1のパイロットラインを構築し稼働開始、また後工程では、3次元パッケージの製造技術開発やチップレットパッケージの設計、テスト技術開発などとなっています。
2025年度のラピダスに対する委託研究費の計画と予算が承認されました。いよいよ工場の稼働も開始されますので、今後ますます注目していきたいです。
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経済産業省:公表資料(3/31)