2024年9月に半導体業界で生じたニュースを10本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年9月号
2024年9月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年9月号
産総研および6社、SATASに新規組合員として加入
半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)は9/3、産業技術総合研究所および6社が新規組合員として加入したと発表しました。
SATASは半導体製造のパッケージング・アセンブリーやテスト工程といった後工程と呼ばれる工程のトランスフォーメーションおよび完全自動化を目的として2024年4月に設立されました。
後工程自動化に必要な技術およびオープンな業界標準仕様の作成、装置の開発と実装、統合されたパイロットラインでの装置の動作検証を行い、2028年の実用化を目指すとしており、今回は下記の7つの団体と企業が加入しています。
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所
- アオイ電子株式会社
- TDK株式会社
- Intel Corporation
- 化研テック株式会社
- ミナミ株式会社
- 伯東株式会社
2028年の後工程自動化はなかなかにハードルが高いと思われますが、関連する企業が加わり、今後の動向に注目です。
- 基ニュース
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半導体後工程自動化・標準化技術研究組合:プレスリリース(9/3)
ローム、中国UAES社とSiCパワー半導体の長期供給契約締結
ロームは9/5、中国の総合車載Tier1メーカーであるUAES社(United Automotive Electronic Systems Co., Ltd.)とSiCパワー半導体に関する長期供給契約を締結したと発表しました。
UAES社は、Robert Boschと中聯汽車電子(上海汽車系の中国企業)との合弁企業として1995年に設立した総合車載Tier1メーカーで、ロームとは2015年より技術交流を開始しています。そして2020年からは中国上海のUAES本社に「SiC技術共同実験室」を設立しています。
ローム株式会社執行役員パワーデバイス事業本部の野間本部長は「今後も、SiCを中心としたパワーソリューションの提供により、UAES社と共に、電気自動車の技術革新に貢献してまいります。」とコメントしています。
EV市場は一時と比較してやや減速傾向にありますが、今後も車両の電動化が進むことは疑いようがないと思います。今回、EVのインバータに使用する素子について長期供給契約を締結しており、ロームとしては安定顧客の獲得とシェア拡大が進むと考えられます。
- 基ニュース
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ローム:プレスリリース(9/5)
インフィニオン、世界初となる300mm GaNウエハを開発
インフィニオンテクノロジーズは9/11、世界初となる300mm(12インチ)のGaN(窒化ガリウム)ウエハ技術の開発に成功したと発表しました。
同社はオーストリア フィラッハのパワー半導体工場の既存の300mmSi製造に統合されたパイロットラインで、300mmGaNウエハの製造に成功しました。GaNとSiの製造プロセスは非常に似ているために既存の300mmシリコン製造装置を利用できる点が利点としています。
300mmウエハでのチップ製造は、ウエハ口径が大きくなることによってウエハ1枚あたり約2.3倍のチップが製造できるため、200mmウエハに比べて技術的に高度であり、生産効率が向上します。
同社では今回の300mmGaNの製造によって2030年までに数十億米ドルに達すると推定される成長中のGaN市場を牽引するとしています。
GaNでの300mmウエハを使用したチップ製造が開発されたということで驚きました。量産化はまだ先だと思いますが、産業用や車載用、民生用でGaNの採用は進んでいます。身近なところではスマホやPCの充電器でしょう。こうした身近なところの製品で300mmウエハのGaNチップが採用される日は近いのかもしれません。
- 基ニュース
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インフィニオンテクノロジーズ:プレスリリース(9/11)
レゾナック、山形にSiCウエハの生産建屋を新設へ
レゾナックは9/13、子会社のレゾナック・ハードディスク山形工場内に、パワー半導体向けウエハ(基板・エピタキシャル)の生産建屋を新設するための起工式を9/12に実施したと発表しました。
新設する工場は2025年の第3四半期竣工予定となっています。
今回の新設は、経済産業省から認定を受けた経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である半導体部素材の供給確保計画の実現に向けた取り組みの一環(供給確保計画認定番号2023半導体第4号-1)で、他の拠点を含めて最大で103億円が助成される計画です。
レゾナックはSiC基板及びエピタキシャル成長を行い、ウエハをデバイスメーカーに販売する材料メーカーです。顧客は国内外に多数いると思われます。経産省に認定された計画に基づいて今回は山形工場の新設を進めるようです。
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レゾナック:プレスリリース(9/13)
経済産業省:供給確保計画認定番号2023半導体第4号-1
インテル、ファウンドリ事業を子会社化、欧州の工場建設を延期へ
インテルは9/16、パット・ゲルンシンガーCEOが同社の社員向けメッセージという形でファウンドリ事業を子会社化や欧州の工場建設を延期などの今後の戦略について言及しました。
同社は現状2四半期連続の赤字に陥っており、業績改善に向けた複数の施策を発表しています。またその一環として進められているリストラは年末までに約1万5000人を削減するという目標の半分以上を達成しているということです。
今回発表された主な施策は下記の通りです。
- Amazon Web ServicesがIntel Foundryを選択
複数年に渡って数十億ドル規模で、カスタムチップ設計へ共同投資を実施しインテル18Aプロセス上でAWS向けのAIチップを生産する見込み - Intel Foundryを子会社として独立させる
経営については引き続きパット・ゲルンシンガーCEOが担いますが、子会社を統括する独立取締役を含む運営委員会を設置するとしています - 設備投資の取捨選択を実施
米国内での製造投資には引き続き注力しますが、欧州ではポーランドに建設予定であった後工程工場とドイツでの前工程工程プロジェクトを約2年間停止します
インテルが苦境からなかなか抜け出せずにいます。設計専門のAMDやエヌビィディア、製造専門のTSMCといった企業が躍進している点からみますとIDMというビジネスモデルの限界が近づいているのかもしれません。
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インテル:プレスリリース(9/16)
SUMCO、佐賀大・産総研とウエハ製造技術に関する包括協力協定を締結
SUMCOは9/17、佐賀大学及び産業技術総合研究所と半導体シリコンウエハの製造技術に関する研究開発や実証実験、ビッグデータ・オープンデータの利活用、人材育成・人材交流など、半導体産業の発展や関連分野の課題解決に資する幅広い活動並びにこれらの関連領域での諸活動を組織的に推進することを目指し、包括協力協定を締結したと発表しました。
SUMCOと佐賀大学は2019年から佐賀大学シンクロトロン光応用研究センターにおいて共同研究を推進し、シリコンウエハの評価・解析などを実施しており、産業技術総合研究所とは2023年から産総研九州センターにてシリコンウエハ製造設備の異常検知のための計測技術のコンサルティングなどを実施しています。
今後は、半導体シリコンウエハの高品質化及び生産性向上に関する研究開発や実証実験、ビッグデータやオープンデータの利活用によるビジネス分野における課題解決、それらの実証を行う人材育成を目指し、研究者・技術者の相互交流をはじめ、学生も含めた教育および育成に取り組むとともに、共同研究成果の積極的な産学活用と応用を目指すとしています。
SUMCOが主力工場がある佐賀県の地元大学、さらに産総研と協力協定を結び、ウエハの製造技術に関する研究開発を進めるようです。過去から実施されてはいますが、ここ最近はこうした産学連携がより一層進んでいるように思われます。特に人材育成の面で期待をしたいと思います。
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SUMCO:プレスリリース(9/17)
ソシオネクスト、メディカル関連事業をミネベアミツミグループへ譲渡
ソシオネクストは9/20、ミネベアミツミグループのエイブリックにメディカル関連事業資産 (主に超音波診断装置及びLSIの開発・製造販売事業)を譲渡すると発表しました。
今回の事業譲渡は9/6付で譲渡契約を締結し、譲渡日は、12/10を予定しています。
ミネベアミツミグループのコア事業のひとつであるアナログ半導体事業の中で、2016年に日立製作所より譲受された医療機器用ICは、エイブリックの注力事業の一つであり、超音波診断装置のキーデバイスである送信IC及び高耐圧スイッチICを主力製品として着実に成長を続けているとしています。
本対象事業は、ヘルスケア・メディカル領域向けにハンドヘルド型超音波診断装置用ソリューション(LSI/基板モジュール/装置)を開発・販売しており、ワイヤレス・低消費電力・小型軽量・高画質が特徴ということです。
ミネベアミツミグループでは今回の事業譲受により大きなシナジー効果を生み出し、アナログ半導体事業全体として2029年3月期の目標売上高2,000億円を達成させるとしています。
ミネベアミツミグループがソシオネクストからメディカル関連事業を譲受して、アナログ半導体事業を強化する模様です。具体的な事業規模は非公表とされていますが、5年後にアナログ半導体事業として売上高2,000憶円を達成させるとしていますので、ある程度の規模であることは想像ができます。同社では今後もこれまでのように買収や事業譲受によって規模拡大を目指していくものと推察されます。
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ソシオネクスト:プレスリリース(9/20)
ミネベアミツミ:プレスリリース(9/20)
レゾナック、ソイテックとSiC貼り合わせ基板の共同開発契約締結
レゾナックは9/24、フランスのSoitec(ソイテック)とSiCの200mm(8インチ)エピタキシャルウエハの材料となる8インチSiC貼り合わせ基板の共同開発契約を締結と発表しました。
SiC基板の生産においては、高度な技術が必要であり結晶成長に時間を要することから、生産性向上が課題となっています。
ソイテック社は、高品質なSiC単結晶基板を加工し、その加工面をサポート基板となる多結晶SiCウエハに貼り合わせ、単結晶基板を薄膜分割することで、1枚のSiC単結晶基板から複数の高品質SiCウエハを生産する独自技術(SmartSiC技術)を保有しています。
そのためレゾナックが持つ高品質なSiC単結晶基板とソイテック社の基板貼り合わせ技術を組み合わせることで、8インチSiCウエハの生産性を向上し、SiCエピウエハビジネスでのサプライチェーンの多様化を目指すとしてます。
SiC基板が持つ生産性という課題に対してソイテックと協業することで解決を進める模様です。直近、EV化の波は鈍化しているようですが、車両の電動化という大きな動きは変わらないと思われます。既にあったようにレゾナックでは生産能力の向上として拠点の新設も進めていますが、生産性課題解決に向けた技術開発をソイテックと共同で進めていくようです。
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レゾナック:プレスリリース(9/24)
SBI、PSMCとの国内半導体製造事業における共同事業を解消
SBIホールディングスは9/27、台湾のPSMCとの協業により日本における半導体工場設立を検討していたが、PSMCからの要請に基づき、共同事業を解消することになったと発表しました。
両社では2023年7月に日本国内での半導体工場建設に向けて準備会社を設立することに合意し、両社の合弁会社とすることを前提にJSMCをSBIグループの100%出資で設立しました。
そして2023年10月に、宮城県黒川郡大衡村に位置する第二仙台北部中核工業団地を工場建設予定地として決定しています。
しかし、PSMCから日本国内での半導体製造事業について対応をしていくことがPSMCとして困難になったため、これを見送りたいという通知を受け、SBIとしてPSMCをパートナーとする日本国内での半導体ファウンドリ事業を継続検討することは困難であると判断したとしています。
ただし同社では、引き続き半導体事業を多面的に展開していく方針であり、宮城県を半導体ビジネスの集積地の1つとするべく、半導体ファウンドリだけでなく半導体後工程工場の展開、生成AIデータセンターの立ち上げ等について、複数の事業パートナー候補と引き続き協議・検討していく模様です。
SBIとPSMCとの共同事業は工場建設の立地まで決まっていましたので、今後に注目していましたが、ここにきて共同事業が解消されるようです。SBIは今後も半導体事業を多面的に展開するとしていますが、果たしてどうなることでしょうか。
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SBIホールディングス:プレスリリース(9/27)
住友金属鉱山、SiC基板の8インチ量産ラインの構築を決定
住友金属鉱山とその100%子会社であるサイコックスは9/27、鹿児島県伊佐市のサイコックス大口工場に貼り合せSiC基板の8インチ(200mm)量産ライン構築を決定したと発表しました。
同社では既に6インチ(150mm)基板を販売しており、貼り合わせ技術のライセンス供与も実施しています。
大口径となる8インチ基板は2024年9月から顧客認定の取得に向けたサンプル出荷を開始しており、量産ライン構築によって2025年度下期には貼り合せSiC基板の月産能力は1万枚(6インチ換算)を超え、ライセンス供与先への多結晶SiC支持基板の供給も開始する予定としています。
サイコックスは2012年に設立された企業で、2017年から貼り合せSiC基板の量産実証ラインの構築を進めています。独自の接合技術を応用した基板製造を行っており、8インチ化にも対応しているようです。数量としてはまだまだこれからだと考えられますが、生産能力と品質が確保されているならば面白い存在かと思っています。
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住友金属鉱山:プレスリリース(9/27)