2024年8月に半導体業界で生じたニュースを10本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年8月号
2024年8月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年8月号
ルネサス、アルティウムの買収が完了
ルネサスエレクトロニクスは8/1、アルティウム社の買収が完了したと発表しました。
アルティウム社の買収については2024年2月に発表され、7月には規制当局の審査が終了したとしていました。その際に8/1付けで買収が完了する見込みとしていました。
今回の買収完了に伴い、アルティウム社はルネサスの完全子会社となり、豪取引所の上場リストから削除されます。アルティウム社のAram MirkazemiCEOは、ルネサスの執行役員 兼ソフトウェア&デジタライゼーション ヘッドに就任し、今後も引き続きアルティウム社CEOを兼任するということです。
ルネサスの柴田CEOは「本日の買収完了は、ルネサスとアルティウム社双方にとって重要なマイルストーンです」と述べています。
ルネサスによるアルティウム社買収が当初の計画通りに完了しました。およそ9000億円を投じた買収が無事に完了し、今後のルネサスの更なる成長に期待をしたいものです。
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ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(8/1)
キオクシア、北上工場第2工場棟が完成
キオクシアは8/1、岩手県北上市の北上工場における第2製造棟(K2棟)の建屋が7月に完成したと発表しました。
K2棟は2022年4月に起工式が行われ、当初は2023年の竣工予定でした。しかしメモリ市況の悪化を受けて延期され、2025年秋に稼働予定となっています。
稼働に向けて2024年11月より管理部門・技術部門等がK2棟の隣に完成した新管理棟に順次、入居を開始するとしています。
2023年はメモリ不況の影響でキオクシアにとって厳しい年でしたが、市況の回復を受けて延期していたK2棟の稼働が見えてきた格好です。不況の中でも投資の手を緩めると他社と引き離されてしまうため、キオクシアには今後も頑張ってもらいたいものです。
- 基ニュース
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キオクシア:プレスリリース(8/1)
信越化学、三益半導体のTOBが完了し連結子会社化に
シリコンウエハ世界最大手の信越化学工業は8/6、持分適用会社である三益半導体工業に対する株式公開買付(TOB)が完了し、連結子会社になることを発表しました。
今回のTOBは6/21から開始され、買付下限数の768万2076株を上回る1465万4042株の応募があり8/5に終了しました。これらの株式はすべて信越化学工業が買い取ります。
8/13付けで三益半導体工業は信越化学工業の連結子会社になることが合わせて発表されています。
今回のTOBは元々信越化学の持分適用会社であった三益半導体を連結子会社にするもので、当初の予定通り事が進みました。敵対的な企業買収ではありませんので、揉めるような内容ではありませんでした。三益半導体はウエハ加工や再生ウエハ事業を手掛けており、信越化学のシリコンウエハ事業がより一層強化されると思われます。
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信越化学工業:プレスリリース(8/6)
インフィニオン、マレーシアのSiC新工場を開所式を挙行
インフィニオンテクノロジーズは8/8、マレーシアのクリム工場に世界最大の200mmSiC工場を開設したと発表しました。
本工場はクリム第3工場のPhase1と呼ばれる建物で、開所式には同社のヨッヘン・ハネベックCEOやマレーシアのアンワル・イブラヒム首相などが出席しました。
このクリム第3工場Phase1には20億ユーロが投じられており、主にSiCパワー半導体の生産とGaNのエピを行うとしています。
インフィニオンはクリム第3工場のPhase2にもおよそ50億ユーロを投資する予定となっており、世界最大かつ最も効率的な200mmSiCパワー半導体工場が誕生するとしています。
パワー半導体世界最大手のインフィニオンが生産能力の向上を推し進めています。Si素子だけではなく、SiCもGaNも攻勢を進めている模様で、日本の各企業との間でシェアが広がってしまう点が懸念されます。
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インフィニオンテクノロジーズ:プレスリリース(8/8)
日向灘の地震が発生、半導体関連企業への影響は軽微な模様
2024年8月8日午後4時43分頃、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1、最大震度6弱の地震が発生しました。
この地震によって、九州地方南部に半導体工場を持つ、ローム(子会社のラピスセミコンダクタ)、SUMCO、ソニーセミコンダクタソリューションズは被害状況と生産について発表しました。
ローム
- 地震直後、ラピスセミコンダクタ宮崎工場(宮崎県宮崎市)が、生産設備の状況確認と安全確保のため、一時的に稼働を停止。ただしラピスセミコンダクタ宮崎第二工場(宮崎県国富町)を含めて、従業員、建物等に被害はなし。
- 一時的に稼働を停止していたラピスセミコンダクタ宮崎工場については、順次、生産装置を立ち上げ、稼働を再開していると8/19に発表。
SUMCO
- 宮崎県宮崎市に所在する生産子会社であるSUMCO TECHXIV宮崎工場において、人的被害はなし。一部の工程で操業を停止して安全点検ならびに品質確認を実施。
- 人的被害はなく、建屋・製造設備への重大な被害はなし。8/10から順次生産を再開し、製品出荷も通常通り実施していると8/19に発表。
ソニーセミコンダクタソリューションズ
- 鹿児島テクノロジーセンター(鹿児島県霧島市)を含む関係事業所における人的被害および建屋・ファシリティに大きな被害はなし。
今回の地震によって南海トラフ地震臨時情報が発表され、新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっているとされました。8/15をもって特別な注意の呼びかけは終了となりましたが、色々と心配になるお盆休みであったかもしれません。半導体関係の工場については人的にも建屋や設備にとっても大きな被害は確認されなかった点は不幸中の幸いでした。
テキサス・インスツルメンツ、米国政府から最大16億ドル助成
米国商務省は8/16、テキサス・インスツルメンツに対してCHIPS法に基づいて、最大16億ドルを助成することを発表しました。
今回提供される資金は次の2か所の工場建設に活用されます。
- テキサス州シャーマン:
65nm~130nmの主要チップを生産する2つの新工場を建設。300mm(12インチ)ウエハ対応の生産ラインで、1日あたり1億個以上のチップ生産能力が見込まれます。 - ユタ州リーハイ:
28nm~65nm のアナログおよび組み込み処理チップを生産するための新工場を建設。こちらも300mmウエハ対応の生産ラインで、毎日数千万個のチップを生産する予定です。
テキサス・インスツルメンツへの支援が決定しました。インテルやTSMC、サムスン電子と比較すると金額では見劣りしますが、米国内に3つの300mmウエハ対応の新工場を建設中です。CHIPS法に基づく支援は390億ドルの予算に対して、今回でおよそ330億ドルに達するとされています。
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米国NIST:プレスリリース(8/16)
TSMC、ドイツ ドレスデン工場の起工式を開催
TSMCは8/20、欧州で初の工場となるドイツ ドレスデン工場の起工式を開催したと発表しました。
今回起工式を実施したドレスデン工場は、TSMCとインフィニオンテクノロジーズ、NXPセミコンダクターズ、ロバートボッシュの4社が出資して設立された合弁会社ESMC(European Semiconductor ManufacturingCompany)が運営します。
総投資額は約100億ユーロ(約1兆6000億円)で、ドイツ政府が半額にあたる50億ユーロを補助します。
ESMCは、フル稼働時には28/22nmプレーナCMOS、16/12nmFinFETプロセス技術に基づいて、300mm(12インチ)ウエハ換算で毎月4万枚を生産する能力を持つと予想されており、2027年末に稼働開始予定となっています。
起工式には欧州委員会委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエン氏、ドイツのオラフ・ショルツ首相、ザクセン州首相のミヒャエル・クレッチマー氏、ドレスデン市長のディルク・ヒルベルト氏らが出席しており、欧州やドイツの意気込みが分かります。合弁会社のスキームや政府支援などは熊本のJASMと酷似していますので、熊本工場がいいモデルケースになっていると思われます。
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TSMC:プレスリリース(8/20)
富士通セミコンダクターメモリソリューション、社名をRAMXEEDに変更
富士通セミコンダクターメモリソリューションは8/20、社名をRAMXEED(ラムシード)に変更すると発表しました。2025年の1/1付けで変更となります。
同社は、2020年3月に富士通セミコンダクターからメモリ事業を分社化して設立されました。主にFeRAM(強誘電体メモリ)やReRAM(抵抗変化メモリ)を手掛けており、NRAM(カーボンナノチューブメモリ)と呼ばれる新たなメモリの開発を進めています。
新社名であるRAMXEEDは、メモリ「RAM」の技術を基軸(同音の「SEED」=種)に、無限の可能性を追い求め、共創しながら成長し続ける会社を表現しているとし、「XEED」は成功のSUCCEED 、今を超えていくEXCEEDという意味を込め、さらに「X」は無限の可能性と共創を示すとしています。
富士通の半導体事業は過去に分社化や売却などで分離再編が進んできました。今回の社名変更で「富士通」を冠する半導体事業会社はなくなるものと思われます。
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富士通セミコンダクターメモリソリューション:プレスリリース(8/20)
三菱マテリアル、世界最大級の角形シリコン基板を開発
三菱マテリアルは8/21、高平坦度かつ低表面粗さを実現した世界最大級の角型シリコン基板を開発したと発表しました。
近年注目度が高まっているチップレット技術とは、従来1チップに集積していた回路を複数のチップに分けて製造し、インターポーザーと呼ばれる基板に載せてチップ間を接続して1つのパッケージにする技術です。チップを配置するキャリア基板に300mmシリコンウエハを利用する場合、ウエハ面積が小さく円形状であるため、効率よくパッケージをウエハ基板に収められないことが課題でした。
そのため同社では大型シリコンインゴットの鋳造技術と、独自の加工技術を組み合わせた大面積かつ四角形状の角型シリコン基板を開発しました。
これによってキャリア基板としての活用や、半導体パッケージのインターポーザー材料としての適用など、生産性向上に貢献できるとしています。
キャリア基板として大型ガラスパネルを用いたPLP(Panel-level-Package)も開発されていますが、こちらは再配線層(RDL)を形成する工程での熱によって反りが発生するといった課題がありました。今回のシリコン基板では高剛性、高熱伝導によって反りも抑えられるということです。今後に期待したいものです。
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三菱マテリアル:プレスリリース(8/21)
北海道大学、レンセラー工科大学と半導体分野における合意書締結
北海道大学は8/22、米国レンセラー工科大学との間で、半導体分野における人材育成・研究活動での協力をともに検討していくための合意文書に署名したと発表しました。
レンセラー工科大学は米国ニューヨーク州に位置する私立の工科大学で、半導体分野の研究開発で世界有数のエコシステムを有するニューヨーク州において、オールバニー・ナノテク・コンプレックス、IBMといった半導体の主要な機関と緊密な関係を有し、半導体分野における教育及び研究において先進的な取組を行っています。
北海道大学の寳金総長は「今回、米国の半導体分野において先進的な取組を行っているレンセラー工科大学と関係が構築され、半導体分野に関する連携の模索を進めることで、より質の高い教育を提供することが期待できるとともに、研究力の向上に資するものと考えています。」とコメントしています。
北海道大学における半導体人材育成と研究開発の協力体制構築が進んでいます。ラピダスや台湾の国立陽明交通大学などとの協力関係に加えて今回はラピダスと協業しているオールバニー・ナノテク・コンプレックスやIBMと連携しているレンセラー工科大学と協力関係を構築するようです。合意書署名後の写真にはラピダスの小池社長や北海道の鈴木知事も写っていますね。
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北海道大学:プレスリリース(8/22)