【半導体業界ニュース】2022年8月のニュースから9本を厳選してご紹介!

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2022年8月に半導体業界で生じたニュースを9本厳選してご紹介します。

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目次

動画で解説:半導体業界ニュース8月号

2022年8月1週目のニュース

SUMCOが好調、22年4月~6月期の売上高が前年同期比31%増、営業利益は2.1倍に

シリコンウエハ大手のSUMCOは8/4に2022年4月~6月期決算を発表しました。

売上高が前年同期比31%増の1070億円、営業利益が同2.1倍の263億円となり営業利益率は24.6%でした。

シリコンウエハの市場環境としては数量が2022年2Q実績として300mm、200mmともに供給能力を上回る需要が継続しており、3Q以降も300mmと200mmはその傾向が続くようです。

価格も300mm、200mm共に契約価格通りであり、スポット価格は上昇しているとのことです。

300mmウエハの需要は2026年までの推定で年平均成長率9.4%としており、引き続き高い成長性が見込まれています。

2022年7月~9月期の予想は売上高が1150億円で営業利益が275億円となっています。

為替による効果も大きいようです。

コメント

SUMCOが好調です。半導体需要が高まりは、そのままシリコンウエハの需要に直結します。現在大手の半導体製造メーカーのほとんどがシリコンウエハメーカーと長期契約を結んで取引をしています。
そのため半導体需要の波が多少訪れてもシリコンウエハメーカーとしては安定的な収益が得やすい状況下にあります。SUMCOの目論見通りであれば、まだまだ好調をキープして成長できそうです。

基ニュース

SUMCO:プレスリリース(8/4)

信越も好調、22年4月~6月期の売上高が前年同期比51%増、営業利益94%増

シリコンウエハ最大手の信越半導体を擁する信越化学工業は、7/27に2022年4月~6月期決算を発表しました。

売上高が前年同期比51.2%の6567億円、営業利益が同93.8%増の2496億円となり、営業利益率は38%となっています。

製造業としては驚異的な水準の利益率です。

シリコンウエハやフォトレジストなどの半導体関連分野である電子材料は売上高が前年同期比31%増の2111億円、営業利益が同36.6%増の775億円となっており、全体の約3割を占めています。

半導体材料の強い需要は継続しているようで、シリコンウエハ、フォトレジスト、マスクブランクス等を最大限に出荷したとのことです。

2023年3月期の業績予想は売上高が2兆5500億円、営業利益が8250億円を見込んでいます。

コメント

SUMCOと同様に信越も好調です。SUMCOはシリコンウエハ専業メーカですが、信越は半導体関連の電子材料は全体の3割で、主力である生活環境基盤材料分野も絶好調のようです。
製造業として営業利益率が38%は驚異的な数字です。TSMCなど上には上がいますが、比肩するレベルと言っていいでしょう。

基ニュース

信越化学工業:プレスリリース(7/27)

2022年8月2週目のニュース

バイデン大統領、半導体産業を支援するCHIPS法案に署名し成立

(出典:ホワイトハウス)

米国のジョー・バイデン大統領は8/9、半導体産業の米国内製造を促進する法案である「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」に署名し、同法が成立しました。

CHIPSとはCreating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(半導体製造に役立つインセンティブの創出)の略称で、法案提出議員団が作った言葉です。

CHIPS法は、中国との技術開発競争に備えた総額約2800億ドルの法律です。その中で半導体産業への資金援助として527億ドルが盛り込まれています

内訳は米国内の半導体工場誘致の助成に390億ドル(そのうちの20億ドルは自動車や防衛システムで使用されるレガシーチップ向け)、研究開発と人材開発助成に132億ドル、国際的な情報通信技術セキュリティとサプライチェーン活動に5億ドルとなっています。

これらに加えて、半導体製造のための設備投資に対して25%の投資減税も行い、米国における半導体工場建設を補助金と減税の両面で支援するものです。

これまでにインテルやサムスン電子、TSMCが米国内に新工場建設の大型投資を発表しています。さらにマイクロンによる400億ドルの投資計画も発表されるなどCHIPS法による効果が出ています。

コメント

先端プロセスの半導体工場建設には巨額の投資が必要です。米国内に工場を誘致するためには必要な法案であったのでしょう。実際に多くの企業がこの補助金を前提とした投資計画を立てているようです。
この法案成立によって半導体業界がより活況になってくれることを望みますが、一方で米中対立がより先鋭化することも懸念です。

基ニュース

ホワイトハウス:プレスリリース(8/9)

TEL、半導体製造装置出荷遅れで22年4月~6月期営業利益が前年同期比17%減少

半導体製造装置大手の東京エレクトロン(以下TEL)は8/8に2022年4月~6月期決算を発表しました。

売上高が前年同期比5%増の4736億円、営業利益は同17%減少の1175億円でした。

TELは旺盛な半導体需要を追い風にして業績を拡大してきましたが、売上高は4四半期ぶりの水準となりました。

一つの要因として資材不足や物流網の混乱によって製造装置の一部で出荷が遅れたことによって売上高の計上が次四半期にずれ込んでいる点があげられます。

2023年3月期の業績見通しは据え置いていますが、今後の事業環境は半導体前工程製造装置市場は前年比5~15%の成長と従来予想の2割程度から引き下げています。

アプリケーション別では、ロジック/ファウンドリは前年比10~20%増(従来予想:25%程度の増加)ですが、DRAMは前年度比5%減少(従来予想:15%程度の増加)、不揮発メモリは前年度比10%増(従来予想と変わらず)としています。

半導体市場全体の成長率を下方修正しています。

コメント

TELの業績急拡大にブレーキがかかりつつあります。と言っても営業利益率は約25%と高い水準にありますが、これまでが更に高かったこともありますので、下がっている感は否めません。
半導体製造装置メーカーとしては、どうしても半導体製造メーカーの投資に経営が依存してしまいます。
世界中で新規の工場建設は進んでいますが、それらが予定通り進むのか、TELとしては新中期経営計画で2027年に売上高3兆円を掲げていますが、今後どうなっていくのか注目していきます。

基ニュース

東京エレクトロン:プレスリリース(8/8)

キオクシア、22年4月~6月期の売上高が前年同期比11%増、営業利益は2.4倍に

フラッシュメモリ大手のキオクシアは8/10に2022年4月~6月期決算を発表しました。

売上高が前年同期比11%増の3673億円、営業利益が同2.4倍の851億円でした。

1月下旬に発生した不純物を部材が生産工程に混入した影響で、操業度が下がり出荷量は減少しました。

ただ円安効果によって販売単価のが上昇し大幅な増益となりました。

今後の市場動向見通しとしては、第1四半期の半ばころから消費マインドが悪化傾向にあり、フラッシュメモリ需要は弱まっているとのことです。

ただし、NAND市場の中長期的なトレンドについては市場の見方に大きな変化はみられていないとしています。

コメント

キオクシアでは年初に不純物を含む部材の混入というトラブルがあり、出荷量が減少しましたが為替による影響もあって営業利益は大きく伸びています。
経済産業省の特定半導体生産施設整備等計画の認定も受け、四日市工場の第7製造棟における製造設備に補助金も付いています。
中長期的な市場トレンドの拡大に向けて引き続き頑張ってもらいたいです。

2022年8月3週目のニュース

サムスン電子、約2兆円を投じて半導体の先端研究開発施設を建設へ

サムスン電子は、8/19に総額20兆ウォン(約2兆円)を投資して、2028年までに器興(キフン)事業所内の約10万9000平方メートルの敷地に、半導体の先端研究開発施設建設を開始したことを発表しました。

建設される新たな施設では、メモリやシステム半導体の次世代デバイスやプロセスに関する先端研究や、長期ロードマップに基づく新技術開発が行われる計画です。

同日に行われた起工式には、サムスン電子の副会長で事実上のトップであるイ・ジェヨン氏はじめ、同社半導体事業部門のメモリ、システム半導体、ファウンドリ各事業のプレジデントらが顔をそろえました。

器興事業所は、サムスン電子の半導体事業発祥の地であり、1992年に64MビットDRAMが誕生した場所として知られています。

起工式に出席するイ・ジェヨン副会長(左から2人目)(出典:サムスン電子)
サムスン電子幹部(出典:サムスン電子)
コメント

サムスン電子が半導体への投資を拡大していきます。今回は生産拠点ではなく、研究開発拠点への投資です。この施設が完成する2028年時点ではスケーリング側や3D化などの技術がどこまで進化しているか分かりませんが、技術限界を克服してさらなる競争力強化を図る見込みです。

基ニュース

サムスン電子:プレスリリース(8/19)

アプライドマテリアルズ、22年5月~7月期決算は過去最高の売上高

(出典:アプライドマテリアルズ)

半導体製造装置最大手のアプライドマテリアルズは8/18に2022年5月~7月期(2022年度第3四半期)決算を発表しました。

売上高が前年同期比5%増の65億2000万ドルで四半期ベースでは過去最高となりました。営業利益が同4%減の19億2400万ドルで営業利益率は29.5%でした。

同社CEOのゲイリー・ディッカーソンは「「当社は過去最高の四半期売上高を計上することができました。しかしながら、サプライチェーンのひっ迫の継続により需要に応えきれておらず、お客さまへの出荷増が引き続き最優先課題となっています。当社はマクロ経済の向かい風を乗り切る自信を持っており、半導体市場の長期的な堅調さと当社の非常に大きな成長機会はさらに続くものと見ています」とコメントしています。

2022年度第4四半期(8月~10月)の売上高見通しは66億5000万ドル±4億ドルとしています。この中にはサプライチェーンひっ迫が継続することも織り込まれています。

コメント

アプライドマテリアルズの決算はまだまだ好調でした。四半期ベースでは過去最高の売上高で第4四半期の予想もさらなる上積みが期待できそうです。ただ足元ではメモリを中心に価格下落、成長率の鈍化が予想されていますので、この辺りが製造装置にどう影響していくか注目です。

基ニュース

アプライドマテリアルズ:プレスリリース(8/19)

2022年8月4週目のニュース

インフィニオン、Ⅱ-ⅥとSiCウエハ供給の複数年契約を締結

ドイツのインフィニオンは、8/23にⅡ-Ⅵ(ツーシックス)とSiCウエハの複数年契約を締結したと発表しました。

SiCとはシリコンと炭素の化合物であり、パワー半導体向けの材料として重要性と需要が高まっています。特にEV向けのインバータや車載バッテリ充電ユニット、充電インフラで使用されています。

インフィニオンのCoolSiCブランドは、すでに産業用パワー半導体向け製品として業界最大となっており、同社のSiC半導体の売り上げは2020年代前半には年平均60%以上で成長し、2020年代半ばまでに約10億ドルに達すると予想されています。

II-VIからインフィニオンへの最初のSiCウエハ納入はすでに行われており、さらに両社は200mm(8インチ)SiCウエハへの移行においても協力する方針ということです。

SiCウエハ(出典:Ⅱ-Ⅵ)
コメント

車両のEV化や脱炭素の流れからパワー半導体におけるSiCの重要性が年々増しています。しかしSiCウエハを供給できるメーカは限られていますので、半導体製造メーカー各社は材料確保に躍起になっています。
今回のインフィニオンの複数年契約締結もその流れでしょう。Ⅱ-Ⅵはウルフスピードに次ぐ世界2位のSiCウエハメーカですし、両社で8インチ化も協力して進めていくようです。
日本メーカもこの流れに取り残されないように頑張ってほしいものです。

基ニュース

インフィニオン:プレスリリース(8/23)

エヌビディア、22年5月~7月期決算は事前予想を下回る売上高

(出典:エヌビディア)

エヌビディアは8/24に2022年5月~7月期(2023年度第2四半期)決算を発表しました。

売上高は前年同期比3%増ですが、前四半期と比べて19%減の67億ドルでした。事前予想は81億ドルでしたので、約17%下回る結果でした。

営業利益は約5億ドルで、前年同期比80%減少、前四半期比73%減少という厳しい結果です。

世界的なインフレによる個人消費の停滞、暗号資産マイニングの需要低下などが要因と考えられており、ゲーム部門売上高が前年同期比で33%減、前四半期比で44%減となっています。

CEOのジェェンスン・フアン氏は「当社の先駆的な取り組みであるアクセラレーテッド コンピューティングと AI は、業界を変革しています。自動車はテクノロジー産業になりつつあり、次の 10 億ドル規模のビジネスに向けて順調に進んでいます。AI の進歩は、創薬から気候科学、ロボティクスまでの分野でブレークスルーを加速させながら、当社のデータセンター ビジネスを推進しています。」とコメントし、足元ではブレーキがかかっていますが今後の成長に意欲的な姿勢を見せています。

ただ、第3四半期の売上高見通しについて59億ドル±2%になるとの予測を示し、前年同期比で15~19%ほどの下落予測です。

コメント

エヌビディアの決算は非常に厳しい内容でした。ただしCEOのコメントにもあるように長期的には成長の余地はあり、あくまでも短期的な業績悪化という側面が強いです。AIや自動運転技術の発展にはエヌビディアの技術が欠かせませんので巻き返しに期待したいです。

基ニュース

エヌビディア:プレスリリース(8/24)

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