2022年2月に半導体業界で生じたニュースの中から5本を厳選してご紹介します。
- 台湾グローバルウェーハズ、独シルトロニック買収不可
- 東芝、パワー半導体用300mmウエハ対応の新製造棟を建設
- デンソー、TSMCとソニー合弁熊本工場に出資を決定
- 米インテル、イスラエルのタワーセミコンタクターを買収
- 独インフィニオン、SiC・GaN用半導体工場を建設
台湾グローバルウェーハズ、独シルトロニック買収不可
世界3位のシリコンウエハメーカーである台湾のグローバルウェーハズは、2/1に同業で世界4位のドイツシルトロニックの買収を断念したと発表しました。
ドイツ政府の承認が期限である1/31までに得られなかったためです。
総額で6000億円程度と見込まれていた大型買収は失敗に終わりました。
しかし、2/6には増産計画を実行することが発表されています。
今後3年間(2022年から24年)で約36億ドル、日本円にしておよそ4000億円もの投資が計画されています。
この中には、300mmのSiウエハのみならず、SiCウエハ、GaN on Siなどの次世代製品も含まれています。
グローバルウェーハズはこれまで同業メーカーの買収を繰り返して世界3位のウエハメーカーに成長してきました。今回シルトロニックの買収が成功すればSUMCOを抜いて世界2位になる見込みでしたが、失敗に終わりました。
とは言え、今後の投資も積極的に取り組む方針を明らかにしており、成長に貪欲な姿勢は変わっていません。
今後の動きにも注目です。
東芝、パワー半導体用300mmウエハ対応の新製造棟を建設
東芝デバイス&ストレージは、2/4に生産拠点である加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)に300mmウエハ対応の新しいパワー半導体製造棟を建設すると発表しました。
市場の動向を見極めながら生産スペースを確保するために、建設は2回に分かれます。
第1期分は2024年度内の稼働を予定しています。
この第1期分フル稼働時には、パワー半導体の生産能力が2021年度比で2.5倍に達する計画とされています。
日本のパワー半導体メーカーもここにきて300mm化の投資を積極的に始めています。
しかし、海外ではインフィニオンが2021年に300mm工場の稼働を開始しており、出遅れていることは明らかです。
希望も込めて、今後の日本企業の巻き返しに期待したいところです。
デンソー、TSMCとソニー合弁熊本工場に出資を決定
デンソーは、2/15にTSMCの半導体受託製造子会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(以下、JASM)に対して、約3.5億米ドル(約400億円)の少数持分出資を行うと発表しました。
この出資により、デンソーはJASMの10%超の株式を取得することになります。
TSMCは2021年11月、熊本県にJASMを設立すると発表しています。
JASMには既にソニーセミコンダクタソリューションズが出資をすることが発表されています。
JASMの工場建屋は2022年の建設開始を予定しており、2024年末までに生産開始を目指しています。
TSMCは今回、既に公表済みである22/28nmプロセスに加えて、12/16nm FinFETプロセス技術による製造も担えるようJASMの能力を強化し、月間生産能力(300mmウエハ換算)も当初発表の4万5000枚から5万5000枚に増強する予定と発表しています。
TSMCの工場にデンソーが出資をすることは、昨年から報道されていましたが正式に決定された模様です。
とは言え今回のデンソーの出資が車載用半導体の安定調達に本当につながっていくのか、さらにはTSMCの工場建設が日本の半導体業界にどういった影響を与えるのか、今後も注目です。
米インテル、イスラエルのタワーセミコンタクターを買収
インテルは、米国時間の2/15にファウンドリ企業であるイスラエルのタワーセミコンダクタを54億ドル(約6000億円)で買収すると発表しました。
インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は、インテルとタワーセミコンダクタの技術は補完関係にあり、ファウンドリ市場は1000億ドル規模で今後約10年急成長が見込まれる、と述べています。
インテルは最先端プロセス開発ではTSMCの後塵を拝していますが、今回のタワーセミコンダクタ買収によってSiGeやBiCMOS、RF CMOSなどの高付加価値工程ラインナップとイスラエル、米国、日本の製造拠点を手に入れました。
インテルのファウンドリ事業が市場の拡大と共に成長していくことができるのか注目です。
独インフィニオン、SiC・GaN用半導体工場を建設
インフィニオンは、ドイツ時間の2/17に20億ユーロ(約2600億円)以上を投資してマレーシアにある拠点にSiC素子とGaN素子用の前工程工場を新規に建設すると発表しました。
新工場は2022年6月に建設開始し、2024年夏には設備を搬入、出荷開始は2024年後半を予定しています。
インフィニオンはSiの300mmウエハ工場が既に稼働しており、SiCとGaNでも積極的な投資攻勢をかけています。日本企業は置いていかれないようにキャッチアップしてもらいたいところです。
インフィニオンのパワー半導体市場での存在感がますます高まっていきそうです。