三菱電機は多くの方がご存じの総合電機メーカーの一社です。品質不正などがニュースにはなっていますが、知名度は抜群と言えるでしょう。
半導体事業は過去にメモリ事業をエルピーダメモリ(現マイクロンテクノロジー)にLSI事業はルネサスエレクトロニクスに譲渡していますが、現在はパワー半導体を中心に事業は継続されています。
この記事では、そんな三菱電機について歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。
是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
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- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特に三菱電機について調べたい
動画で解説:三菱電機について
三菱電機はパワー半導体に強みを持つ大手総合電機メーカー
三菱電機は本社が東京都千代田区丸の内にあります。東京駅の目の前といえる場所です。さすがは三菱グループです。
設立は1921年で、設立から100年を超える長い歴史を持つ企業です。上場市場は東証プライム市場、資本金が約1,700億円、売上高が2023年3月期で約5兆円、従業員数が連結が約14万5千名という巨大企業です。
主な事業は、
- 重電システム
- 産業メカトロニクス
- 家庭電器
- 電子デバイス
などとなっています。このうち半導体事業は電子デバイスに含まれます。
三菱電機の歴史
三菱電機は1921年に三菱造船株式会社の電機製作所を母体にして三菱電機株式会社として独立、設立されました。設立から100年を超す長い歴史を持つ企業です。
半導体の研究を開始したのは1952年です。日本企業としてはかなり早い時期に開始しています。
そして1959年に半導体の量産専門工場として北伊丹工場を設立しています。
1976年には国家プロジェクトである超LSI技術研究組合に参画しています。このプロジェクトは、三菱電機の他に日立製作所、東芝、NEC、富士通が参画し、1980年代の日本の半導体産業の興隆期をもたらした要因のひとつです。
1981年には北伊丹製作所福岡半導体工場として、現在のパワーデバイス製作所が設立されています。
1980年代は三菱電機をはじめ他の日本企業が作るDRAMなどが世界を席巻しましたが、バブル崩壊後はさまざまな要因から苦境に陥りました。
そして2003年に日立製作所とシステムLSIを中心とする合弁会社であるルネサステクノロジ(後にNECエレクトロニクスと統合して現在のルネサスエレクトロニクス)を設立しました。さらにDRAM事業はエルピーダメモリ(現在のマイクロンテクノロジー)に譲渡しています。
しかしパワー半導体と高周波、光領域の製品は残しており、近年は特にSiCパワー半導体に注力をしています。
三菱電機の半導体事業内容
三菱電機の半導体事業は主にパワーデバイスと高周波・光デバイスを扱っています。
その中でもパワーデバイス事業が売上高の多く(75%程度)を占めており、重点成長事業に位置付けられています。
パワーデバイス事業では特に自動車分野向けが電動化の進展によって高い成長率が見込まれています。特にSiCデバイスの採用が加速しています。2022年から2025年の間に平均成長率21%が見込まれています。
高周波・光デバイス事業では、5G基地局向けのGaNデバイスが成長する見込みとなっています。
SiCパワー半導体市場は今後特に高い成長率が見込まれている市場です。2021年から2027年までにSiCモジュール市場は平均成長率43%と急激に拡大する見込みです。
三菱電機はSiCに1990年代から開発に着手しており、2010年代以降に家電や鉄道向けに実用化が進んできました。今後市場が拡大するSiCパワー半導体市場に三菱電機としても注力していくようです。
三菱電機の半導体市場シェア
ディスクリート半導体市場における東芝のシェアを確認してみましょう。
2020年のデータですので少々古いですが、まず市場全体としては今後も右肩上がりの成長が見込まれている分野です。その中で三菱電機は世界3位、約5%のシェアを確保しています。
トップはドイツのインフィニオンテクノロジー、2位は米国のオンセミで、日本企業では東芝やローム、富士電機、ルネサスエレクトロニクスが上位に食い込んでいます。ただし3位以下のシェアは似たり寄ったりで大きな差異はありません。
SiCパワー半導体に限った市場シェアも確認してみましょう。
まず市場の成長予測としては2021年から2027年の間に34%の成長率で拡大し、市場規模はおよそ6倍に成長することが見込まれています。用途としてはメインは車載向けです。電動車向けのインバータなどがメインの用途と考えられます。
売上高ランキングでは、トップがSTマイクロエレクトロニクスで、2位がインフィニオン、3位がウルフスピードで、三菱電機は6位に位置しています。
三菱電機の業績
三菱電機の業績を確認しましょう。
2022年度(23年3月期決算)は三菱電機全体として売上高が5兆36億円、営業利益2,623億円とともに過去最高を更新しています。
電子デバイス事業では、売上高が2,815億円、営業利益292億円で営業利益率が10.4%となっています。製造業で営業利益率が10%を超える水準というのは良い内容と考えられます。
ただし23年度の見通しは売上高が2,700億円、営業利益140億円で営業利益率5.2%と減収減益となる見込みです。
三菱電機の製造拠点
三菱電機の製造拠点には大きく2つに分かれています。
- 高周波光デバイス製作所
- パワーデバイス製作所
この内、高周波光デバイス製作所は兵庫県伊丹市にあり、その名の通り高周波デバイスや光デバイスの製造を行っています。
パワーデバイス製作所はさらに3拠点に分かれています。
- パワーデバイス製作所
(福岡県福岡市)
後工程マザー工場 開発、設計 - パワーデバイス製作所 広島
(広島県福山市)
Si8インチ、Si12インチ(24年稼働) - パワーデバイス製作所 熊本
(熊本県合志市)
前工程マザー工場 Si8インチ、SiC6インチ
パワー半導体分野へは追加投資が進んでいます。当初、21年度から25年度までの設備投資計画を1,300億円としていましたが、これを倍増させて2,600億円とすることが発表されています。
そしてその中で熊本県菊池市にSiC8インチウエハに対応した新工場を建設し26年に稼働予定です。
三菱電機の年収
三菱電機の年収を確認しましょう。多くの方が気になるところですね。
2022年に提出されている三菱電機の有価証券報告書によりますと、従業員数36,700名の平均年収として807万円となっています。なかなかの高年収企業と言えます。
新卒の採用情報に記載されている初任給は他の大手企業と変わらないレベルです。入社後の昇給が異なってくると推察されます。
三菱電機の品質不正問題
三菱電機の品質不正問題は、ニュースや新聞での報道がなされており、ご存じの方も多いでしょう。半導体事業とは直接的な関係はないようですが、社内のさまざまな事業において不適切な行為が確認されています。
不正は不正のトライアングルと呼ばれる3つの要素が重なった場合に生じると言われています。その要素とは、以下の3つです。
- 機会
- 動機
- 正当化
複数人によるチェック体制などがなく、個人がやろうと思ったら不正を行うことができる環境下にある機会、やらなければ納期に間に合わないなどの動機、そして過去からやっている、他の人もやっているなどの正当化です。
内部のことは知る由がありませんが、こうした要素が三菱電機内で重なっていたのかもしれません。
三菱電機としては、調査結果総括として、
- 不適切行為を引き起こす直接的な原因があった
- 言えなかった/言わせなかったという組織風土の問題
- 点検や監査といった内部統制やガバナンスシステム
をあげており、再発防止を含む3つの改革を行うとしています。組織風土というものは簡単には変わらないでしょうが、期待したいものです。
三菱電機まとめ
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