KOKUSAI ELECTRICは、日本の半導体製造装置メーカーで主に半導体プロセスで使う成膜装置の大手企業です。
元々は日立国際電気という社名でしたが、分離独立する形で現在のKOKUSAI ELECTRICとなっています。この記事では、そんなKOKUSAI ELECTRICについて歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特にKOKUSAI ELECTRICについて調べたい
動画で解説:KOKUSAI ELECTRICについて
KOKUSAI ELECTRICは成膜装置大手
KOKUSAI ELECTRICは本社が東京都千代田区にあります。
設立は2017年と最近ですが、前身は日立製作所の子会社として事業運営をしていた日立国際電気の半導体製造装置事業という企業です。
2023年に東証プライム市場に上場しており、証券コードは「6525」。資本金が約100億円、売上高が2024年3月期で約1,800億円、従業員数が約2,500名という企業です。
KOKUSAI ELECTRICの歴史
KOKUSAI ELECTRICは、その前身である国際電気が1949年に設立されました。
当初は電気通信機器および高周波応用機器の製造販売を主目的とする企業でした。1956年にゲルマニウム、シリコン単結晶引上装置を受注し、ここから半導体製造装置事業を開始しました。
そして1960年代から70年代に現在の主力製品となっている拡散炉やCVD装置の開発をしています。1989年には現在の主力拠点である富山事業所の操業を開始しています。
2000年に国際電気株式会社ち日立電子株式会社、八木アンテナ株式会社が合併し、株式会社日立国際電気に商号変更がされています。
そして2018年、HKEホールディングスが日立国際電気を完全子会社化し会社分割により、日立国際電気の成膜プロセスソリューション事業をHKEホールディングスが承継し、KOKUSAI ELECTRICに商号変更して現在に至っています。
KOKUSAI ELECTRICの位置付け
次に半導体製造装置メーカーにおけるKOKUSAI ELECTRICの位置づけを確認してみましょう。
上図は2023年の世界の半導体製造装置メーカー売上高ランキングです。
KOKUSAI ELECTRICは世界14位に位置しており、国内では東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN、日立ハイテク、DISCOに次いで6位となっています。
国内企業が強みを発揮している装置分野で一定の存在感があると言えます。
KOKUSAI ELECTRICの事業内容
KOKUSAI ELECTRICの事業は大きく装置ビジネスとサービスになっています。売上高の比率では装置ビジネスがおよそ7割、サービスが3割となっています。
装置は主に成膜プロセス装置とトリートメントプロセス装置です。
ウエハ上に回路の素材となるポリシリコン膜や絶縁膜等の薄膜を形成する装置
成膜した膜質の改善を目的としており、プラズマや加熱により膜中の不純物除去、粒子安定化により膜質改善をする装置
半導体のアプリケーション別では4割以上がNANDフラッシュメモリで次にロジック・ファウンドリとなっており、DRAM、その他と続きます。
半導体プロセスにおける成膜工程の位置付け
ここで半導体プロセスにおける成膜工程の位置付けを確認しましょう。
半導体を作る工程は、大きく分けて
- ウエハを製造する工程
- 前工程
- 後工程
に分けられます。この中で特に前工程ではウエハ上に素子や配線を形成するために薄膜を形成する工程が複数存在します。
成膜工程についてもう少し詳しく見てます。薄膜を作製する工法には成膜する膜種によって複数の手法が存在します。大きくは以下の4つに分類されます。
- スパッタ
- CVD
- 熱酸化
- めっき
KOKUSAI ELECTRICが製作する装置はこの中のCVDと熱酸化に分類される装置を手掛けています。
KOKUSAI ELECTRICの強み
KOKUSAI ELECTRICではバッチALD技術と呼ばれる成膜方法に強みを持っています。
ALDとはAtomic Layer Depositionの略称で、複数のガスをサイクリックに供給する工程を伴い、原子層レベルで成膜する手法です。通常ALD技術では成膜に時間がかかり、生産性という課題がありました。
KOKUSAI ELECTRICでは、ALD技術と複数枚のウエハを同時に処理するバッチ成膜技術を融合し、高アスペクト比の溝や孔を多数持つウエハに対しても、高い生産性で、ステップカバレッジ(段差被覆性)に優れた成膜が可能な装置を製造しています。
特に近年高積層化されているNANDフラッシュメモリでは欠かせない装置であると考えられます。
このバッチALD装置では世界シェアトップとなっています。
KOKUSAI ELECTRICの業績
KOKUSAI ELECTRICの業績は2024年3月期は売上高が1808億円、営業利益が307億円、営業利益率にして17.0%ということで、製造業としては高い営業利益率になっています。
ただし前年比では減収減益でした。この要因としてはNANDフラッシュメモリが投資抑制によって大きく減少した点が影響しています。
2025年3月期は増収増益の見込みとなっています。
KOKUSAI ELECTRICの製造拠点
KOKUSAI ELECTRICの製造拠点は富山県富山市に位置する富山事業所が主力の工場となっています。
2022年には装置の生産能力を拡大するために富山県砺波市に新工場を建設すると発表しています。こちらは2024年9月に竣工式が実施されています。
いずれにしても富山県内に開発、製造の拠点が集約されている形です。
KOKUSAI ELECTRICの年収
最後にKOKUSAI ELECTRICの年収を確認しましょう。多くの方が気になるところですね。
2024年に提出されているKOKUSAI ELECTRICの有価証券報告書によりますと、従業員数約1,100名の平均年収として約860万円となっています。平均年収が800万円を優に超える高年収企業と言えます。
新卒の採用情報に記載されている初任給は他の大手企業と変わらないレベルです。これは入社後の昇給が異なってくると推察されます。
KOKUSAI ELECTRICまとめ
- 公式サイト