ディスコは、日本の半導体製造装置メーカーで主に半導体プロセスで使うダイシング装置の大手企業です。
ウエハを切る、削る、磨く装置とツールに特化しており、時価総額、営業利益率、給与が高いことでも有名です。この記事では、そんなディスコについて歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
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- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特にディスコについて調べたい
動画で解説:ディスコについて
ディスコはダイシング装置大手
ディスコは本社が東京都大田区あります。
創業は戦前の1937年、会社としての設立は1940年です。
社名のディスコは、前身である第一製砥所(英文名Dai-Ichi Seitosho CO, Ltd.)の頭文字に由来しています。
東証プライム市場に上場しており、証券コードは「6146」。資本金が約200億円、売上高が2024年3月期で約3,000億円、従業員数が約4,800名という企業です。
ディスコの歴史
ディスコは1937年に第一製砥所として造船の街として有名な広島県呉市で創業されました。
しかし後発組であったため、民需を求めて1940年に東京へ移転し組織を有限会社第一製砥所に変更しています。
この1940年が会社として設立の年となっています。元々は砥石メーカーで、砥石の薄型化に取り組み成功しました。しかし当時は高精度な砥石を使いこなせる切断装置がなかったため、自ら装置開発を進めました。
砥石と精密加工装置の技術を活かして、半導体の分野に進出して1978年に世界初となる全自動のダイシングソー「DFD2H/S」を開発しました。1998年には300mmウエハ対応のダイシングソー、グラインダを開発しています。
ディスコの位置付け
次に半導体製造装置メーカーにおけるディスコの位置づけを確認してみましょう。
上図は2023年の世界の半導体製造装置メーカー売上高ランキングです。
ディスコは13位に位置しており、国内では東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN、日立ハイテクに次いで5位となっています。
国内企業が強みを発揮している装置分野で一定の存在感を持っています。
ディスコの事業内容
ディスコは3つの技術の柱を持っています。それが
- 細かく切り分けるダイシング
- 薄く削るグラインディング
- 鏡のように磨くポリッシング
であり、この3つの技術を活かして
- 精密加工装置事業
- 精密加工ツール事業
- アプリケーション事業
を行っています。
半導体プロセスにおける位置付け
ここで半導体プロセスにおける位置付けを確認しましょう。
半導体を作る工程は、大きく分けて
- ウエハを製造する工程
- 前工程
- 後工程
に分けられます。
この中でウエハを製造するウエハメーカーではシリコンインゴットから切り分けたウエハを削ります。
そして前工程でチップを作り込まれたウエハは必要な厚さに薄化され、磨かれます。
最後に後工程でウエハから1つ1つのチップに切り分けがされます。こうした工程にディスコの装置が利用されています。
ダイシング工程についてもう少し詳しく見てます。ダイシング工程ではウエハ上に作り込まれたチップを1つずつ切り分ける工程です。
まず、紫外線を照射すると粘着力が弱くなるUVテープを貼り付け、テープとウエハをフレームに固定します。
次に実際のダイシングを行います。ダイシングには大きく2つの方式があり、1つはダイシングブレード(ダイヤモンド砥粒が付いた円形刃)を使ってチップ間(スクライブライン)に沿ってカットするブレードダイシングです。もう1つはブレードの代わりにレーザーを使ってカットするレーザーダイシングです。
そしてダイシング後にウエハの裏面から紫外線(UV光)を照射し、UVテープの粘着力を落とします。
最後にテープを引き延ばし(エキスパンド)、隣接するチップ間の距離を取ってから良品チップのみをピックアップします。
ディスコではブレードダイシングの装置やダイシングブレード、レーザーダイシング装置などを手掛けています。
ディスコの強み
ディスコの強みは圧倒的な市場シェアです。ダイシングソーで7,8割をグライダとポリッシャでは6,7割の市場シェアを占めているとしており、経済産業省の資料でも裏付けが取れます。
さらにダイシングやグラインディングで使用する消耗品であるツールも供給できます。元々は砥石メーカーであったため当然ですが、自社の装置が稼働している限りは、こうしたツールが必ず売れますので安定的な収益となります。
ディスコの業績
ディスコの業績は製造業とは思えないような数字となっています。
2023年度決算では売上高が3,075億円と過去最高を更新し、営業利益が1,214億円とこちらも過去最高を更新しております。
そして営業利益率が驚異の39.5%となっており、10%を超えたら優秀と言われる製造業では考えられないような超高収益企業と言えます。
製品別では売り上げのメインは装置ですが、ツールもおよそ2割を占めています。
地域別では海外売上高比率が9割近くとなっており、そのうちの多くのアジア地域となっています。OSATに代表される後工程工場の多くがアジア地域にあるということですね。
時価総額ランキング
ディスコは時価総額が高いことでも知られています。
日本企業の時価総額ランキングは上図のようになっており、トップのトヨタ自動車をはじめとする各業界を代表する大企業が並んでいます。各社は売上高が数兆円から十数兆円という企業がほとんどです。
この中にディスコは39位にランクインしており、半導体関連企業に絞るとトップクラスです。株式市場から高い評価を受けていることが分かります。
ディスコの製造拠点
ディスコの開発拠点は東京都大田区にある本社と羽田にR&Dセンターがあります。
メインの製造拠点としては創業の地である広島県呉市にある呉工場とその近くにある桑畑工場があります。また長野県茅野市も製造拠点があり、生産能力を拡大しています。
ディスコの年収
最後にディスコの年収を確認しましょう。多くの方が気になるところですね。
2024年に提出されているディスコの有価証券報告書によりますと、従業員数約3,000名の平均年収として約1,500万円となっています。平均年収が1,500万円を超える超高年収企業と言えます。
新卒の採用情報に記載されている初任給は他の大手企業と比べて10万円ほど高くなっています。
年収分布まで公表しており、2023年時点での大学院卒の総合職では2年目(25歳)で平均年収が1,000万円を超えており、驚くべき数値となっています。うらやましい限りですね。
ディスコまとめ
- 公式サイト