アドバンテストは、日本の半導体製造装置メーカーで半導体デバイスを測定するテスタの大手企業です。平均年収が高いことでも知られています。
この記事では、そんなアドバンテストについて歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特にアドバンテストについて調べたい
動画で解説:アドバンテストについて
アドバンテストは半導体テスタ大手
アドバンテストは本社が東京都千代田区丸の内にあります。東京駅の目の前といえる場所です。
設立は1954年で、2024年は設立から70周年となる長い歴史を持つ企業です。上場市場は東証プライム市場、資本金が約323億円、売上高が2023年3月期で約5,600億円、従業員数が約7,000名という企業です。
社名のアドバンテストは、「Advanced Test Technology」からつくられた造語です。
アドバンテストの歴史
アドバンテストは1954年に武田郁夫氏が東京都板橋区熊野町に「タケダ理研工業株式会社」を創業したのが始まりです。同年に最初の自社製品であるマイクロ・マイクロ・アンメータを発売しました。
1957年には日本で初めてのエレクトロニック・カウンタとして、計測結果をデジタル表示するユニバーサル・カウンタ「TR-124B」を発売し、便利な周波数測定器として大いに歓迎されました。
1972年に国産初の半導体試験装置であるLSIテスト・システム「T-320/20」、メモリ・テスト・システム「T320/30」を発売。
1985年には社名を現在の株式会社アドバンテストに変更しています。そして同年に半導体試験装置市場におけるトップ・シェアを獲得して世界のトップメーカーになっています。
1996年に現在の開発、生産の中心拠点となっている群馬R&Dセンタを開設しました。
近年は他社の買収による事業拡大も進めており、2011年に半導体試験装置大手Verigy社を、2022年にパワー半導体テスタのサプライヤーCREA社を買収しています。
半導体プロセスにおけるテストの位置付け
ここでは半導体プロセスにおけるテストの位置づけを確認しましょう。
半導体を作る工程は大きく分けて、
- 材料であるウエハを作る工程
- 半導体プロセスの前工程
- 半導体プロセスの後工程
に分けられます。
前工程はウエハに回路を作り込む工程で、洗浄や成膜、フォトリソグラフィ、エッチングなどの工程を繰り返し繰り返し数百工程行います。そして完成したウエハ内のチップが想定した通りに動作するかを確認する工程がウエハの電気特性検査工程です。
後工程では良品チップを切り出してパッケージ化します。パッケージ化されたICの最終的な試験が最終検査工程です。このウエハの電気特性検査と最終検査でテスタはハンドラといった装置が使用されます。
ウエハ電気特性検査についてもう少し見てみましょう。
ウエハ上に作り込まれたICチップを1つずつ正しく動作するか電気的に確認するための試験を行う工程です。
ここで使用されるのが、
- テスタ
- ウエハプローバ
- プローブカード
です。まずテスタはICに一定の信号を入力し、ICが出力する信号とあらかじめプログラムされた正しい信号や規格と比較してい良否判定を行うための装置です。アドバンテストはこのテスタを製造している企業です。
ウエハプローバは測定するウエハをステージ上に運び、テストヘッドに取り付けられているプローブカード経由でテスタから信号を伝えるための装置です。
プローブカードはICの全電極に合わせてプローブと呼ばれる針を配置したカードです。この針がICの電極と接触することで電気的な動作試験が可能になります。
アドバンテストの事業内容
アドバンテストは創業当時、計測器メーカーでした。後に半導体試験装置に進出してトップメーカーとなっています。そんなアドバンテストのコア技術は「電子計測技術」です。このコア技術を活かして
- 半導体・部品テストシステム事業
- メカトロニクス関連事業
- サービス新規事業
を行っています。特に半導体テストシステムはSoCテスタやメモリテスタに強みを持っています。
アドバンテストの市場シェア
アドバンテストの市場シェアは近年高まっています。
2020年に全体シェアが43%でしたが、2021年には4%上がって47%、そして2022年には10%も上がり57%にまで伸びています。SoCテスタ、メモリテスタで共に過半のシェアを持っており世界のトップ企業となっています。
アドバンテストの業績
そんなアドバンテストの2022年の業績は好調でした。売上高は前年度比34.4%増加の5,602億円。営業利益は同46.2%増の1,677億円でした。営業利益率は29.9%とほぼ3割に達しています。製造業としてはかなり高い水準です。
事業別の売上高は7割以上を半導体テストシステム事業で稼いでいます。中でもSoCテスタでの売り上げが大きく占めていることが分かります。半導体テストシステム事業は2020年と比較して倍増しています。半導体需要の高まりがアドバンテストの業績を押し上げている格好です。
出荷先の国別では、海外売上高比率が96%前後となっており、ほとんどが海外向けということが分かります。その中でも8割弱が韓国、台湾、中国向けとなっており、半導体生産拠点がこの3国に偏っているということが分かります。
2023年の業績見込みはSoCテスタ、メモリテスタ等の市況悪化によって減収減益となる見込みです。
アドバンテストの開発・製造拠点
アドバンテストの開発、製造拠点は、主力の生産拠点として群馬県の群馬工場(群馬県邑楽町)があります。
開発拠点としては
- 群馬R&Dセンタ、EMCセンタ(共に群馬県邑楽町)
- 仙台研究所(宮城県仙台市)
- 埼玉R&Dセンタ(埼玉県加須市)
- 北九州R&Dセンタ(福岡県北九州市)
となっており、複数の研究開発拠点を持っています。
アドバンテストの年収
アドバンテストの年収を確認しましょう。多くの方が気になるところですね。
2023年に提出されているアドバンテストの有価証券報告書によりますと、従業員数約2,000名の平均年収として1,010万円となっています。平均年収が1,000万円を超える高年収企業と言えます。
新卒の採用情報に記載されている初任給は他の大手企業と変わらないレベルです。これは入社後の昇給が異なってくると推察されます。
生成AIの発展とアドバンテスト
最後に近年流行っている生成AIの発展とアドバンテストとの関係を見てみましょう。
同社の決算資料によりますと生成AIがもたらす事業機会として、GPUやCPU、高性能メモリといった生成AI用デバイスのテストプラットフォームは同社がすべて保有しています。加えて2.5D,3Dといった先端パッケージ用のテスト技術も保有をしているとのことです。
そのため、今後生成AIのさらなる発展にはアドバンテストのテスト技術は欠かすことができないということになります。そうした背景もあって直近2023年では同社の株価はかなり伸びている格好です。
アドバンテストのまとめ
- 公式サイト