2024年10月に半導体業界で生じたニュースを9本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年10月号
2024年10月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年10月号
デンソーとローム、半導体分野の戦略的パートナーシップ検討開始に合意
デンソーとロームは9/30、半導体分野における戦略的パートナーシップの検討開始に合意したと発表しました。
両社はこれまでも車載向け半導体の取引や開発を通じて連携を進めてきており、今後は信頼性の高い製品の安定供給の実現に加え、持続可能な社会に寄与する高品質・高効率な半導体の開発に関するさまざまな取り組みに向けて本パートナーシップを検討していくとしています。
加えてデンソーは、今回のパートナーシップをより強固なものとするために、ロームの一部株式を取得する予定です。
自動車部品メーカー大手のデンソーとロームがパートナーシップの検討開始を合意した模様です。具体的な内容は今後詰めていくと思われますし、デンソーによる株式取得によって両社の協業関係が強化されると考えられますので今後にも注目していきます。
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デンソー:プレスリリース(9/30)
ローム:プレスリリース(9/30)
三菱電機、12インチSiウエハのパワー半導体チップを後工程に供給開始
三菱電機は9/30、パワーデバイス製作所 福山工場で製造する12インチSiウエハを用いたパワー半導体チップのモジュール組立工程に向けた本格的な供給を開始したと発表しました。
これによって民生分野向けを皮切りに、最新のSiパワー半導体モジュールの安定生産が可能になる見込みです。
そして今後の高まるパワー半導体の需要に対して、迅速かつ安定的に製品を供給することで、各分野のパワーエレクトロニクス機器の省エネ化を実現し、GXに貢献するとしています。
三菱電機の福山工場では2023年8月に12インチSiウエハ対応生産ライン設置を完了したと発表しています。そこから約1年で量産準備を行い、本格的な量産フェーズに入ったようです。パワー半導体ではSiC関連のニュースが多いですが、それでも主力はまだまだSiです。そのため今回の12インチウエハでの本格量産で数量の増加とコスト低減が図られると考えられます。
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三菱電機:プレスリリース(9/30)
富士フイルム、先端半導体材料の開発・生産・品質評価設備を増強
富士フイルムは9/30、半導体材料事業を拡大するため、静岡と大分にある開発・生産拠点において、先端半導体材料の開発・生産・品質評価などの設備を増強すると発表しました。
今回の設備投資の総額は、約200億円となっており、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズが、静岡と大分にある2つの開発・生産拠点において設備増強を行います。
静岡拠点では、EUV向けフォトレジストをはじめとする先端レジストなどの開発・生産・品質評価機能を強化するために約130億円を投資し、新棟を建設。
大分拠点では、約70億円を投資し、既存の工場に隣接する土地に新棟を建設しポストCMPクリーナーの生産能力を拡大するとしています。
静岡拠点の新棟の稼働開始は2025年秋、大分拠点の新棟の稼働開始は2026年春を予定となっています。
富士フイルムのフォトレジストは日本企業が強い半導体材料の分野です。今回の一連の投資によって開発のスピードアップとともに生産能力の拡大、品質評価体制の拡充を進めていくようです。
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富士フイルム:プレスリリース(9/30)
トッパンフォトマスク、テクセンドフォトマスクに社名変更
トッパンフォトマスクは10/1、11/1から社名を「テクセンドフォトマスク(Tekscend Photomask Corp.)」に変更すると発表しました。
同社は、半導体用フォトマスクの製造・販売会社として、凸版印刷からの会社分割により設立され、2022年4月より営業を開始している外販フォトマスク企業です。
新社名であるテクセンドフォトマスクのTekscendは、技術を意味するTechnologyと上昇を意味するAscendを組み合わせた造語です。外販フォトマスクのリーディングカンパニーとして、技術力をさらに高め、半導体業界の最前線で成長を続ける意思を表しているとしています。
同社では今回の社名変更により、世界中のステークホルダーに対して、先端微細加工技術を強みとする企業としての認知度を高めるとしていますが、凸版印刷を彷彿させる文字が一切なくなり、個人的には認知度が下がるのではと懸念しています。もちろん今後時間をかけて浸透させていくことが想定されますが、それも結構かかりそうな気がするのは私だけでしょうか。
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トッパンフォトマスク:プレスリリース(10/1)
ラピダス、後工程の研究開発機能をセイコーエプソン千歳事業所内に設置
ラピダスは10/3、北海道千歳市のセイコーエプソン千歳事業所内にクリーンルームを構築し、半導体後工程の研究開発拠点であるRCS(Rapidus Chiplet Solutions)を開設すると発表しました。
同日に着工に伴ってラピダス セイコーエプソン千歳事業所内パイロットライン工事安全祈願祭が執り行われたとしています。同社はここで「2nm世代半導体のチップレットパッケージ設計・製造技術開発」をテーマに、自動化も含めたチップレットパッケージの量産技術の開発を進める計画です。
2025年4月より製造装置導入を開始し、2026年4月を目標に研究開発活動をスタートするとしています。具体的にはFCBGAプロセス、Siインターポーザ・プロセス、RDLプロセス、ハイブリッドボンディングプロセスに対応したパイロットラインが設置され、装置の自動化等も含めた量産技術の研究開発が行われる見込みです。
ラピダスがセイコーエプソン千歳事業所内にクリーンルームを設置して研究開発拠点とする事案は2024年の4月に協議開始が発表されていました。今回はより具体的な内容が決まった模様です。ラピダスが建設を進める千歳工場に隣接した場所にあり、既存の建屋を活用できる点は大きいのかと考えられます。
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ラピダス:プレスリリース(10/3)
JSファンダリとオキサイド、溶液法SiCウエハ事業で業務提携へ
JSファンダリとオキサイドは10/9、溶液法SiCウエハ事業において業務提携に関する基本合意書を締結したと発表しました。
溶液法で製造するSiCウエハは従来の昇華法と比較してウエハ内の欠陥が少なく、より高品質なSiCウエハ製造が可能と見込まれています。
JSファンダリは、国内初となる独立系ファンダリ専業会社として設立され、アナログやパワー半導体の前処理、裏面処理、EPI 積層、チップサイズパッケージなどの加工・製造を行っている企業です。製造拠点は旧新潟三洋電子であった新潟工場です。
オキサイドは、国立研究開発法人物質・材料研究機構発のベンチャー企業として2000年に設立されており、山梨県北杜市に本社と工場があります。
SiCパワー半導体は車載用をはじめとして実用化が進んでいます。ただしSiCウエハは主に昇華法で製造されておりSiウエハと比較して欠陥が多い点が課題のひとつです。今回提携が発表された溶液法は昇華法と比較して欠陥を少なくすることができる可能性があるということですので、実用化に向けて頑張ってもらいたいですね。
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JSファンダリ:プレスリリース(10/9)
オキサイド:プレスリリース(10/9)
日清紡マイクロデバイスと沖電気、薄膜アナログICの3次元集積に成功
日清紡マイクロデバイスと沖電気工業は10/17、アナログICを薄膜化し3次元で集積化に成功したと発表しました。
今回発表された技術は、アナログICが作りこまれたウエハの機能層を剥離し、他のアナログICが形成されたウエハ上に接合することでアナログICが積層された3次元アナログICが実現するというものです。
アナログICの性能を維持したまま、積層により小型化を図ることができ、さらに、積層部を薄膜化しているため、チップ厚もこれまでと同等で、既存半導体パッケージに実装することが可能としています。
本技術は、アナログICなどの多様な半導体デバイスを集積するヘテロジニアス集積に応用可能であり、両社は製品開発を進め、2026年の量産化を目指すとしています。
アナログICは微細化には不向きで、特にローエンド品は巨額の投資がコスト的に見合いません。ただし小型化は求められますので、今回開発された3次元積層化はとても面白いと思います。機能層のみを剥離して他のウエハに積層できるとは思いませんでした。成熟した製品でもこうした開発が進んでいることがよく分かります。
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日清紡マイクロデバイス:プレスリリース(10/17)
沖電気工業:プレスリリース(10/17)
サンケン電気、能登半島地震で被災した志賀工場を閉鎖へ
サンケン電気は10/18、2024年元日に発生した能登半島地震で被災した石川サンケン志賀工場を閉鎖することを決定したと発表しました。
同工場は被災後、復旧を進めて3月下旬には全面的な生産再開をしていました。しかし震災影響評価の結果、恒久的使用は困難との結論に至り、2026年4月末に閉鎖する予定です。
今後、2026年4月末までに志賀工場における生産品を、石川サンケンの他工場や国内外生産拠点へ移管、また一部生産品については終息する予定としています。
同工場の閉鎖に伴い、同工場建物等の固定資産除却により、第2四半期連結決算において約10億円の特別損失を計上する見込みとなっています。
元日の震災から復旧が進んでいましたが、恒久的な使用が難しいということで工場閉鎖となりました。石川サンケンには他の工場もありますが、こちらは言及されていませんので、問題がなかったと思われます。今後の生産移管やEOLなどは非常に大変な業務だろうと推察されます。
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サンケン電気:プレスリリース(10/18)
TI、会津工場でGaNパワー半導体の生産を開始
テキサス・インスツルメンツは10/24、会津工場でGaNパワー半導体の生産を開始したと発表しました。
今回の生産開始に伴い、テキサス州ダラスにある既存工場のGaN生産と合わせて、生産能力が4倍に拡大されるということです。
GaN は、エネルギー効率、スイッチング速度などでのパフォーマンスに利点がある半導体材料で、ノートPCやスマホの電源アダプタやサーバー電源、太陽光発電などに普及しつつあります。
同社では300mmウエハでのGaN製造プロセス開発にも成功したとしており、現在は200mmウエハを使用していますが将来的には300mmウエハへの移行が可能としています。
テキサス・インスツルメンツはアナログや組み込み処理チップを得意とする企業です。それらとGaNパワー半導体を組み合わせて、より省電力なシステムを提供することができることになると思われます。GaNにおけるシェア拡大も進むことが想定されます。
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テキサス・インスツルメンツ:プレスリリース(10/24)