【半導体業界ニュース】2023年7月のニュースを9本厳選してご紹介!

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2023年7月に半導体業界で生じたニュースを9本ご紹介します。

目次

動画で説明:半導体業界ニュース2023年7月号

2023年7月末時点の世界半導体市場と株式市場推移

各ニュース記事:半導体業界ニュース2023年7月号

日本と欧州、半導体に関する協力覚書を締結

経済産業省は7/4、西村経済産業大臣とブルトン欧州委員(域内市場担当)が半導体に関する協力覚書を締結したことを発表しました。

協力覚書の内容は半導体について、以下の内容となっています。

  • サプライチェーンの混乱に対処するための早期警戒メカニズムの構築
  • 次世代半導体に関する研究開発、人材育成
  • 最先端半導体のユースケースの創出
  • 半導体分野における補助金の透明性確保
コメント

6月にはオランダ政府との協力覚書を締結しましたが、今回は欧州全体との協力関係を促進するようです。
特に今回の内容では、PFAS(ペルフルオロアルキル物質・ポリフルオロアルキル物質)などフッ素系化学物質の代替品に関して、半導体や次世代半導体の製造に不可欠な構成要素の研究開発に関する協力体制の確立するとしています。PFASはドライエッチング工程で使用する冷媒など半導体製造には欠かせない物質ですが、有害性が指摘されており、将来的に大手メーカーが生産を終了する見込みです。そのため代替品の確立が急務になっています。

基ニュース

経済産業省:プレスリリース(7/4)

ルネサス、ウルフスピードと10年間のSiCウエハ供給契約を締結

ルネサスエレクトロニクス(以下ルネサス)とウルフスピードは7/5、ウエハの供給契約およびルネサスによるウルフスピードへの20億ドルの預託金提供を発表しました。

これによってルネサスはウルフスピードから10年間に渡って6インチのSiCウエハ(ベアウエハ、エピウエハ)を供給を受けることになります。ルネサスでは2025年から開始予定となっているSiCパワー半導体の量産に向けた取り組みの一環となります。

さらに将来的には8インチSiCウエハの供給も予定されているとのことです。

電力制御を担う高効率なパワー半導体の需要は、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及などにより、自動車向け、産業向けともに、著しく拡大しています。ルネサスではSiのIGBT向けに甲府工場を2024年に再稼働するほか、SiCは高崎工場で量産するためのラインを新設するとしています。

コメント

SiCパワー半導体は世界のパワー半導体メーカーが積極的に量産化、生産設備増強を進めています。ルネサスでも2025年の量産に向けた取り組みとしてSiCウエハの長期安定的な確保に動いたということです。SiCはSiに比べてウエハの欠陥が多く高品質なウエハの確保が大きなポイントです。そうした観点ではウルフスピードは世界最大のSiCウエハメーカーですので、そこから調達することは心強い内容と思われます。あとは予定通りにルネサスのSiCラインが立ち上がることが大切ですね。

基ニュース

ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(7/5)

ウルフスピード:プレスリリース(7/5)

SBIが台湾PSMCと提携、国内に半導体工場を設立へ

SBIホールディングスは7/5、台湾のファウンドリ大手であるPowerchip Semiconductor Manufacturing Corporation(PSMC)と、日本国内に半導体工場建設に向けて準備会社を設立することについて基本合意したと発表しました。

工場立地や建設開始時期、稼働時期については未定としており、今後詳細が決まり次第、発表するとしています。

PSMCは世界6位、台湾3位のファウンドリ企業であり、8インチ工場を2拠点、12インチ工場を3拠点持ち、ロジックとメモリを生産しています。

まずは40/55nmプロセス品を車載用、産業用向けに製造し、中期的には28nm以下のプロセスノードに移行し、長期的には先端半導体開発の研究所を設立する構想です。

コメント

今回発表された資料を見ますと、建設される工場は12インチラインで、設立準備会社は「JSMC」とするようです。TSMC九州熊本に既に工場建設を進めており、ラピダスが北海道千歳に工場建設を決めています。今回発表された新工場建設は拠点立地も時期も未定ということです。土地や資材、人材の確保が重要ですが、果たしてどういった計画で進めるのかについて、今後の発表を待ちたいと思います。

基ニュース

SBIホールディングス:プレスリリース(7/5)

PSMC:プレスリリース(7/5)

ローム、宮崎県にSiCパワー半導体の新たな生産拠点を取得

ロームは7/12、宮崎県にSiCパワー半導体の新たな生産拠点を取得することを発表しました。

今回発表された内容は、出光興産の子会社であるソーラーフロンティア株式会社と、同社の旧国富工場(宮崎県東諸県郡国富町)の資産取得について基本合意がされ、23年10月に取得するというものです。

ロームにとっては本社工場の既存棟、宮崎県のラピス宮崎工場、福岡県のローム・アポロ筑後工場に次ぐ4番目のSiCパワー半導体の生産拠点となる見込みです。

既存の建屋とクリーンルームを活用することで2024年末の早期稼働を目指しており、2030年までのSiC生産能力をカバーできるとしています。これによってSiCパワー半導体の生産能力は2021年比で35倍に達するということです。

コメント

ロームがSiCパワー半導体への注力を加速しています。決算説明資料でもSiCの4つ目の拠点を計画中としていました。今回は計画が具体的に決まったため公表された格好です。それにしても2021年比で生産能力35倍とはすごいですね。シェア拡大に期待したいところです。

基ニュース

ローム:プレスリリース(7/12)

経産省、SUMCOのシリコンウエハ新工場に最大750億円助成

経済産業省は7/14、シリコンウエハ大手のSUMCOが佐賀県内に建設する2工場に対して最大で750億円の助成をすることを発表しました。

この助成は、同社の設備投資計画が。「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」に基づく「供給確保計画」に認定されたことによって、設備投資金額の2,250億円のうち最大で1/3にあたる750億円が助成されるためです。

建設予定の工場は、佐賀県伊万里市の久原工場と佐賀県吉野ヶ里町の吉野ケ里工場です。久原工場では結晶製造を行い、吉野ケ里工場でシリコンウエハへ加工する工場となります。どちらも2029年から300mmウエハの供給を開始予定としています。 同法による認定供給確保計画は今回で11件目ですが、今回のSUMCOの計画は過去最大の助成金額となります。

コメント

6月に吉野ヶ里町の工場用地取得を公表していたSUMCOですが、その地に建設する工場計画が早くも経産省の認定を受けた格好です。もちろんそうした前提で進めていたと思われます。
TSMCの熊本工場のような大規模な助成はさまざまなニュースで取り上げられますが、今回のSUMCOをはじめとする認定供給確保計画は11件目です。数億円から数百億円規模ですが、こうした取り組みも、もっと世間に知ってもらいたいですね。

基ニュース

経済産業省:プレスリリース(7/14)

SUMCO:プレスリリース(7/14)

TSMC、23年2Q売上高は前年同期比10%の減少

台湾TSMCは7/20、2023年第2四半期(4月から6月期)決算を発表しました。

売上高が前年同期比10.0%減少の4,808億4,000万台湾ドル(約2兆1,500億円)、純利益が前年同期比23.3%減少の1817億台湾ドル(約8,140億円)でした。

第2四半期売上高における先端プロセスの割合は、5nmプロセスが30%、7nmプロセスが23%であり、7nmプロセス品以下が全体の53%を占める状況です。 プラットフォーム別の売上高はHPC向けが44%、スマホ向けが33%ですが、スマホ向けは前四半期比でマイナスとなっています。 自動車向け、データセンター向け以外はすべてマイナス成長となっており、厳しい状況が分かります。

売上高と純利益がともに減少する減収減益となったのは、2019年第一四半期以来、約4年ぶりのことです。 また、米国アリゾナ州に建設中の工場操業開始時期が当初の2024年から2025年にずれ込む見通しであることを明らかにしています。ただし、熊本県に建設中の工場は予定通り2024年から稼働開始するとのことです。

コメント

TSMCが減収減益に陥りました。先に苦境に陥っていたメモリメーカーなどを尻目に絶好調だった昨年の反動が来ているようです。とは言え、そんな中でも純利益率が37.8%と驚異的な水準にあることは変わらず、TSMCの強さが垣間見える格好です。
米国の新工場稼働が遅れるようですが、長期的に見ればAI半導体などの需要は今後拡大することが見込まれますので、今年は厳しい年になりますが、来年以降は回復してくるでしょう。

基ニュース

TSMC:プレスリリース(7/20)

日本とインド、半導体サプライチェーンパートナーシップ締結

経済産業省は7/20、西村康稔経済産業大臣がインドのデリーを訪問し、ヴァイシュナウ電子情報技術大臣と会談を行い半導体サプライチェーンの強靱化に向けた日印の協力強化を目的とした「日印半導体サプライチェーンパートナーシップ」に係る協力覚書に署名をしたと発表しました。

今後、日本のインドの政府間で政策対話を開始し、両国産業間連携の協力を促進するとしています。

コメント

今回、具体的な内容は発表されていませんが、インドとの協力という意味合いでは、半導体の製造や装置、材料ではなく、設計分野と考えられます。双方の強みを補完できるような関係構築に期待したいものです。

基ニュース

経済産業省:プレスリリース(7/20)

信越グループの三益半導体、300mmシリコンウエハ新工場を建設へ

シリコンウエハ世界最大手の信越化学工業グループである三益半導体工業は7/25、群馬県高崎市にある現工場の隣接地に、300mmシリコンウエハの新工場を建設すると発表しました。

新工場建設に770億円を投じてシリコンウエハ製造用建屋と、電気やガス、水道などのユーティリティー設備を建設するとしています。 2023年8月に着工し、2025年7月に完成予定です。

コメント

シリコンウエハは信越化学、SUMCOの日本企業が強い分野です。今後も長期的には半導体需要は拡大しますので、それに対応した動きでしょう。頑張っていただきたいものです。

基ニュース

三益半導体工業:プレスリリース(7/25)

三菱電機、酸化ガリウムパワー半導体開発に向けノベルクリスタルテクノロジーに出資

三菱電機は7/28、次世代パワー半導体ウエハとして注目される酸化ガリウム(Ga2O3)ウエハを開発・製造・販売するノベルクリスタルテクノロジーに出資したと発表しました。

近年、パワー半導体用ウエハとして従来から利用されるSiに加え、SiCやGaNの開発が進んでいます。さらなる高耐圧かつ低電力損失のパワー半導体を実現するために期待されている材料のひとつが酸化ガリウムです。

ノベルクリスタルテクノロジーは、世界でもいち早くパワー半導体用酸化ガリウムウエハの開発や製造、販売に着手した実績を持っています。三菱電機の出資によって同社が長年培った低電力損失・高信頼性のパワー半導体の製品設計や製造における技術と、ノベルクリスタルテクノロジーが保有する酸化ガリウム製造技術を融合させることで、省エネ性に優れた酸化ガリウムパワー半導体の研究開発を加速するとしています。

コメント

ノベルクリスタルテクノロジーが持つ酸化ガリウムの結晶基板やエピ技術と三菱電機が持つSiやSiCパワー半導体のデバイスや製品設計技術が上手く融合してくれることを願いします。ノベルクリスタルテクノロジーに出資するのは三菱電機だけではありませんが、パワー半導体で実績を持つ同社が出資することには大きな意味があると思いますし、意味があるように進めてもらいたいものです。

基ニュース

三菱電機:プレスリリース(7/28)

ノベルクリスタルテクノロジー:プレスリリース(7/28)

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