ここ数年「半導体」というキーワードがニュースや新聞でよく見られます。
半導体不足でスマホやゲームなどの電子機器や、自動車が作れないといったネガティブなニュースや、その半導体不足を解消するために製造メーカーが大規模な投資をして工場を建設するといったポジティブなニュースなどさまざまです。
良くも悪くも半導体というものが重要であり、現代生活には欠かすことができないものであることが世間に知れ渡ってきています。
しかし「半導体」という言葉の本来の意味をご存じでしょうか?
半導体には、電気抵抗率が導体と絶縁体の中間という物理学的な本来の意味と、ニュースなどの一般的に使われるICやLSIとしての2つの意味があります。
本記事では半導体という言葉が持つ2つの意味について図解でなるべくわかりやすく説明します。
ぜひ最後までご覧ください。
動画で解説:そもそも半導体とは?
半導体は身近にたくさんあり、現代生活には欠かせない
半導体を使ったトランジスタは20世紀最高の発明品と言われています。
トランジスタを開発した3名(ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレー)は1956年にノーベル物理学賞を受賞しています。
さらに集積回路(IC)を発明したジャック・キルビーも2000年にノーベル物理学賞を受賞しています。
PCやスマホの中を見てみると、基板上にたくさんのICが配置されています。この黒いパッケージの中には半導体チップが入っています。
この半導体チップはシリコンウエハ上に多数作りこまれます。半導体チップの原材料がシリコンウエハです。
今では、半導体はさまざまな製品に搭載されており、目に触れないだけで身近にあふれてわれわれの生活に多大な恩恵を与えてくれています。
現代生活には半導体は欠かすことができない重要なモノなのです。
具体的には、
- PCやスマホ、タブレット
- 自動車
- ゲーム機
- 各家電製品
- ロボット
- サーバー
などに使用されています。どれもなくては困るものばかりです。
そのため、半導体は「産業のコメ」とも称されています。
産業のコメと言うよりは、電気や水などと同じく社会インフラと言っても過言ではありません。
ちなみに電気の電圧制御などにも半導体は使用されています。
半導体という言葉が持つ2つの意味
ここでは「半導体」という言葉の持つ意味を考えていきます。
新聞やニュースなどで使っている意味は、
半導体=半導体を使って作ったIC、LSIなどのチップ
のことを指しています。
しかし本来の物理学的な意味としては、電気の流れやすさで定義されます。
半導体は、電気を流しやすい「導体」と電気を流しにくい「絶縁体、または不導体」の中間の性質を持つ物質のことを指します。
半導体を英語では「semiconductor」と表記しますが、semi(半分の)conductor(導体)となっていますので、その名の通り半分の導体ということです。
電気抵抗率と半導体を構成する元素
電気抵抗率が電気の流れやすさを示す
電気の流れやすさを厳密に定義するためには、電気抵抗率を使います。
電気抵抗率は比抵抗とも呼ばれます。
電気抵抗率は、その物質の電気の通しやすさを数値で示したものです。
電気抵抗率の数値が小さい=電気を流しやすい
金や銀、銅、アルミニウムなどの金属
もっとも抵抗率が低いのは銀
電気抵抗率の数値が大きい=電気を流しにくい
ゴムやガラス、油など
電気抵抗率の数値が導体と絶縁体の間
具体的な数値は1uΩcmから10MΩcm程度の物質
半導体物質としては、もっとも使われているシリコンや、1940から60年代頃に盛んに研究開発されたゲルマニウムなど
半導体の面白い点は、不純物を入れることによって電気抵抗率をある程度自由に制御できる点です。
この特徴を活かしてトランジスタなどのさまざまな素子が作られます。
不純物の注入については別の記事で詳しく説明していきます。
半導体はさまざまな元素で構成される
半導体は構成する元素の種類によって大きく3つに分類されます。
- 元素半導体 単一元素から構成される半導体
代表的なものに広く使われているシリコン(Si)や半導体黎明期に開発、使用されていたゲルマニウム(Ge)などがあります。 - 化合物半導体 2種類以上の元素の化合物で構成される半導体
代表的なものにGaAsやGaN、InSb、InPなどがあります。主に発光ダイオード(LED)やレーザーなどのオプトエレクトロニクス関連や、高速動作が求められる用途に使用されています。 - 金属酸化物半導体 金属酸化物から構成される半導体
代表的なものにIGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素から構成)やITO(インジウム、スズ、酸素から構成)などがあります。ディスプレーやセンサなどに使用されています。
電子部品としての半導体の種類
最後に半導体を電子部品としての分類で見てみましょう。
WSTS(世界半導体市場統計)の分類によりますと、大きくICと非ICに分けられます。
ICではマイクロ、ロジック、アナログ、メモリの4つに分類されます。
非ICではオプト、センサ、ディスクリートの3つに分類され、全体としては7分類されます。
- マイクロ:マイクロプロセッサやマイクロコントローラなど
- ロジック:標準ロジックやASICなど
- アナログ:AD/DAコンバータや電源ICなど
- メモリ:DRAMやフラッシュメモリなど
- オプト:発光ダイオードやレーザーなど
- センサ:圧力センサやジャイロセンサなど
- ディスクリート:パワーMOSやIGBTなど