ソニーは日本を代表する企業のひとつであり、多くの方がご存じでしょう。大手電機メーカとして知られていますし、ゲームや音楽、映画に金融など幅広い事業展開をしています。
そんなソニーですが、古くはトランジスタラジオを世界で初めて実用化した企業でもあり、半導体事業には長い歴史を持つ企業です。近年ではCMOSイメージセンサで革新的な技術開発を続け、世界シェア1位となっています。
この記事では、ソニーの半導体事業について歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。
是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特にソニーの半導体事業について調べたい
動画で解説:ソニーの半導体事業について
ソニーグループとは電機メーカであるソニーを中心とする複合企業
ソニーグループ株式会社は、本社が東京都港区港南にあります。最寄りの駅はJR品川駅です。
設立は1946年5月です。終戦から1年も経っていない時期ですね。多くの方がご存じのように井深大氏と盛田昭夫氏らによって設立された東京通信工業株式会社が前身です。
上場市場は東京証券取引所プライム市場で、証券コードは6758。
売上高は2022年3月期で約10兆円です。この金額は半導体事業だけではなく、ソニーグループ全体の数字ですが、売上高としては日本企業全体で9位に位置付けられる金額です。日本を代用する企業のひとつと言って過言ではないでしょう。
事業内容は多岐に渡り、以下のようになっています。
- ゲーム&ネットワークサービス
- 音楽
- 映画
- エンターテインメント・テクノロジー&サービス
- イメージング&センシング・ソリューション
- 金融
この中でイメージング&センシング・ソリューション事業がいわゆる半導体事業に該当します。
ソニーグループは2021年から持ち株会社となり、その傘下に各事業を担う会社があります。もっとも有名なソニー株式会社はエンターテインメント・テクノロジー&サービス事業を担っています。
ソニーの半導体事業を担っているのが、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社になります。半導体事業の売上高は22年3月期で1兆764億円あり、全体の10%以上を占めています。営業利益は1556億円でぜんたいの10%弱となっています。
ソニーグループにおける半導体事業の歴史
ソニーにおける半導体事業は日本の半導体産業黎明期から始まっています。
1954年にトランジスタを日本で初めて実用化し、その翌年にトランジスタラジオを発売しています。しかしこの頃はトランジスタの歩留りが非常に悪く、作っても作っても良品が取れない歩留り0%ということも珍しくなかったそうです。
1957年には当時在籍していた江崎玲於奈氏がpn接合のドープ量を増やして特性を確認する中でトンネル効果を実証し、その後ノーベル物理学賞を受賞しました。ただし受賞時はIBMに移籍した後のことでした。
その後はCCDイメージセンサの開発、実用化やCMOSイメージセンサの技術革新を次々と行い現在に至っています。
ソニーセミコンダクタソリューションズとは
ソニーセミコンダクタソリューションズは本社が神奈川県厚木市にあり、ソニーグループが100%出資している完全子会社です。売上高は半導体事業の売上高とイコールの約1兆円、従業員数や約8100名です。
ソニーセミコンダクタソリューションズはソニーの半導体事業の本社機能、商品企画、設計、販売を担っています。
そして量産開発と実際の製造を担っているのが、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングです。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは本社が熊本県菊陽町にあり、ソニーセミコンダクタソリューションズが100%出資しています。従業員数は約10600名です。
CMOSイメージセンサとは光を電気信号に変換する半導体
ソニーが強いCMOSイメージセンサについて簡単に原理をみていきましょう。
イメージセンサとは
「光を電気信号に変換する半導体」
身近なところではみなさんがお持ちのスマホについているカメラに使用されています。
イメージセンサは
- CCDイメージセンサ
- CMOSイメージセンサ
の2つに大別されます。
イメージセンサの構成は大きく3つの部品から成り立ちます。
- レンズ
- カラーフィルタ
- 受光素子であるフォトダイオード
イメージセンサはレンズで集めた光をカラーフィルタで色ごとに分離して、フォトダイオードで電荷を生成することで光を電気信号に変換しています。
CCDイメージセンサはフォトダイオードで生成した電荷を画素間でバケツリレーのように転送し、1つのアンプで信号を増幅します。
画素間の電荷転送に高電圧を印加する必要があり、消費電力が高くなるというデメリットがありますが、アンプが1つであるためアンプ特性のばらつきに左右されず画質が高くなるというメリットがあります。
一方でCMOSイメージセンサは、各画素毎にアンプとスイッチを持っており、各画素で生成した電荷を増幅して必要な画素のみスイッチをオンして出力します。
読み出す画素のみオンするため消費電力を抑えることができますが、アンプ特性のばらつきによって画質が左右されます。
画質が悪いという課題は近年ではどんどんと改善されており、ロジックでも使われるCMOS回路であり集積性が高く安価に作れるため、カメラではCCDイメージセンサを凌駕してほとんどCMOSイメージセンサが使用されています。
ソニーはCMOSイメージセンサでブレイクスルーを相次いで起こしてきました。
従来のCMOSイメージセンサでは光を受けるフォトダイオードとレンズ、カラーフィルタ間に配線層があるため、フォトダイオードまで十分に光が届かずに感度が上がらないという課題がありました。
そこで受光部分をチップ裏面に作ることで配線層による影響をなくし、感度を大幅に向上させたのが裏面照射型CMOSイメージセンサです。
さらに同一チップ上に形成されていた画素と信号処理回路を分離して積層することで受光領域を広げたのが、積層型CMOSイメージセンサです。ソニーではさらに画素と回路間にDRAM層を設ける3層構造にすることで高速読み出しも実現しています。
ソニーセミコンダクタソリューションズの市場シェア
技術で数々のブレイクスルーを起こしてきたソニーのCMOSイメージセンサ市場でのシェアは2020年時点で48.2%と過半近くを占めています。ちなみに2位はサムスン電子、3位がオムニビジョンとなっています。
さらにイメージセンサ市場自体は今後も成長していくことが予想されています。
ソニーグループの事業説明会資料でもイメージセンサ市場は今後も拡大していくことが予想されており、年平均成長率9%が見込まれています。
そのためソニーは半導体事業への投資を拡大しており、2025年目標として市場シェア60%を掲げています。
ソニーセミコンダクタソリューションズの業績
ソニーグループのセグメント別売上高と営業利益を抜粋した半導体事業の業績では、四半期によって上下がありますが安定した売上高と10%弱から20%近い営業利益率を継続しています。第4四半期は営業利益が下がる傾向にあるように見えます。
2022年度の業績見込みは、売上高が前年度1兆764億円に対して1兆4,400億円が見込まれています。営業利益も前年度1,556億円に対して2,000億円が見込まれており、為替の寄与が大きいものの大幅な増収増益見込みとなっています。
ソニーセミコンダクタソリューションズの製造拠点
ソニーセミコンダクタソリューションズの製造拠点は、子会社であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの拠点となります。
北からみていきますと、
- 山形テクノロジーセンター
旧NECそして旧ルネサスの鶴岡工場をソニーが買取り、CMOSイメージセンサの前工程工場
300mm(12インチ)ラインを持っている - 白石蔵王テクノロジーセンター
半導体レーザ一貫工場 - 東浦サテライト
ディスプレイ関係の工場 - 大分テクノロジーセンター
CMOSイメージセンサの前工程工場
300mm(12インチ)ラインを持っている - 長崎テクノロジーセンター
CMOSイメージセンサの前工程工場
300mm(12インチ)ラインを持っている
近年、工場拡張投資が進む - 熊本テクノロジーセンター
CMOSイメージセンサの一貫工場
300mm(12インチ)ラインを持っている
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの本社が置かれる
隣接してTSMCの熊本工場が建設中 - 鹿児島テクノロジーセンター
アナログLSI、MMIC等の一貫工場
ソニーの年収
最後にソニーの年収を確認しましょう。
ソニーグループの有価証券報告書によりますと、平均年収は1000万円を超えています!持ち株会社のデータですが、羨ましい限りですね。
ソニーセミコンダクタソリューションズなどの子会社はもう少し下がることが想定されますが、それでも高給であると思われます。
新卒採用情報でも他の企業よりもやや高めの設定になっています。
まとめ
- 公式サイト