半導体はスマホやパソコンはもちろん、我々の身の回りのものの多くに使われており、現代生活に欠かせないものです。
ここ数年で半導体の重要度の認識が広がりニュースや新聞などで取り上げられることも増えています。
そんな半導体業界の将来性を感じて就職や転職を検討している方がいると思います。
またすでに半導体業界で働いていて、今後高い評価を得るために、資格取得を検討することもあるでしょう。
この記事では、半導体業界で活かせる資格を9つ解説します。是非とも最後までご覧ください。
ぜひとも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味関心がある
- 半導体を勉強したい学生さんや社会人の方
- 半導体業界に就職、転職したい方
動画で解説:半導体業界で活かせる資格9選
資格の種類と取得するメリット・デメリット
資格は大きく以下の3つに分類できます。
- 国家資格
- 公的資格
- 民間資格
国家資格とは、文部科学省によりますと以下のように定義されています。
「国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。」
医師や弁護士、公認会計士といっただれもが聞いたことのある有名なものから、自動車の運転免許証といった多くの方が取得されているものまで様々な種類があります。
国家資格は慣例的に業務独占資格、名称独占資格、必置義務資格に分類されます。
その資格を所持する人のみが業務を行えるもので、有資格者以外は業務に携わることを法律で禁じられています。医師や弁護士はその典型例です。
有資格者以外はその資格の名称利用が法令で禁止されている資格のことで、保育士や技術士などが該当します。
特定の事業を行う際に、その企業や事業所に資格保持者を必ず置かなければならないと法令で定められている資格のことです。衛生管理者や危険物取扱者、宅地建物取引主任者などが該当します。
業務独占資格と名称独占資格、必置資格は重複することもあります。
公的資格は明確な定義がありませんが、一般的に国家資格と民間資格の中間に位置付けられています。
簿記検定や実用英語技能検定(英検)のように知名度が高い資格があります。
民間資格は、民間団体が自由に設定できる資格です。
そのため玉石混交になりますが、TOEICや証券アナリストなどの知名度が高い資格も存在します。
国家資格や公的資格でも同様ですが、特に自分にとって有用かどうかを充分考慮して受験する必要があります。
資格を取るメリットとデメリットをそれぞれ3つ考えてみます。
まず資格を取るメリットは以下の3つです。
- 有資格者でなければ就けない業務に従事できる(業務独占資格や必置義務資格)
- 自らの専門性を客観的に示すことができる
- 自分自身に対しての自信になる
一方で資格を取る(または取ろうとする)デメリットは以下の3つです。
- 資格を取ればいいという訳ではない(資格だけでは食べていけない)
- 資格よりも実務経験が重視される場合がある
- だれでも合格できるわけではない
これらのメリットとデメリットから、学生の方であれば現在学んでいることと関連したり延長線上にあること、社会人の方も仕事で関連することを資格を通じて学ぶことをおすすめします。
または明確にやりたいこがある場合、そのやりたいことに関連する資格(特に業務独占資格や必置義務資格)を取得するとメリットを大きく享受することができるでしょう。
半導体業界で活かせる資格9選
ここから半導体業界で活かせる資格を9つご紹介します。
その9つとは以下の資格です。
- 半導体技術者検定
- 統計検定
- QC検定
- 情報処理技術者試験
- G検定
- エネルギー管理士
- 危険物取扱者
- 毒物劇物取扱責任者
- 衛生管理者
前半の5つは知識系の試験です。
これがないと業務に就けないわけではありません。
ただ、半導体業界に就職や転職したいと考えている方や半導体業界に従事している中でさらにレベルアップを図りたい若手社員の方におすすめです。
後半の4つは必置義務資格です。半導体工場に勤める際に持っていると有利に働きます。
半導体技術者検定
半導体技術者検定は一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会が実施する検定試験です。
半導体に特化した資格試験は目下のところ唯一と言っていいでしょう(技能士試験を除きます)。
試験は3級、2級、1級に分かれています。ただ2級が以下の3つに分かれており、このすべてに合格すると1級認定されます(1級の試験はありません)。
- 設計と製造
- パワーエレクトロニクス
- 応用と品質
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
試験はCBT方式(コンピュータを利用して実施する試験方式のことで、受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。)で実施され、試験期間内に全国各地にあります指定された試験会場を予約して受験します。
合格基準は45点満点中の31点ですので、およそ70%以上で合格できます。
受験料は学生が安くなっていますので、半導体業界に就職したい学生の方は受験することをおすすめします。
半導体技術者検定の詳しい内容と勉強方法については、こちらからどうぞ。
統計検定
統計検定は一般財団法人統計質保証推進協会が実施する検定試験です。
半導体業界に限らずですが、現代では多くのデータを扱います。
半導体業界でも製造データや製品の検査データなど非常に多くのデータがあるため統計学を学ぶことは有用です。
試験は4級から3級、2級、準1級、1級と5段階に分かれています。
少なくとも2級まで学んでおけば統計学の考え方やデータの取り扱いに長けてきます。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
統計検定も試験はCBT方式(コンピュータを利用して実施する試験方式のことで、受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。)で行われます(1級を除く)。
合格基準は60点以上です。
統計検定も受験料は学生が安くなっていますので、学生の方は特におすすめです。
もちろん社会人の方であっても統計学を学んだことがない方は、是非とも一度学んでみてはいかがでしょうか。
学んで損することはありません。
統計検定の詳しい内容と勉強方法については、こちらからどうぞ。
QC検定
QC検定は正式には品質管理検定と言い、一般財団法人日本規格協会が実施する検定試験です。
品質管理に関する知識を問う検定で、品質管理の中では統計学を使いますので統計検定と重複する部分もあります。
QC検定では統計学を品質管理に利用する、より実践的な内容と言うことができます。
統計学を学んだ後、または並行して学ぶことをおすすめします。
試験は4級から3級、2級、準1級、1級の5段階に分かれています。
準1級は1級試験(マークシート方式と論述式)でマークシート方式のみ満足した方が認定されます。
QC検定も2級まで学べば品質管理に関する基本的な内容は網羅できるでしょう。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
QC検定は試験会場に集まってのマークシート方式で行われます(1級は加えて論述式)。
合格基準は70点以上です。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は独立行政法人情報処理推進機構が実施する国家資格です。
いくつかの区分に分かれていますが、ここでは基本情報技術者試験を取り上げます。
対象者像は「高度 IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者」となっており、一般的にはプログラマやSEの方向けの試験ですが、コンピュータ科学やハードウェアを学ぶためには最適な試験です。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
基本情報技術者試験もCBT方式(コンピュータを利用して実施する試験方式のことで、受験者はコンピュータに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。)で行われます。
午前試験と午後試験があり、合格基準は午前午後共に60点以上です。
G検定
G検定は一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施するディープラーニング検定の中のジェネラリスト検定のことです。
ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定すると謳われています。
半導体に限らずですが、人工知能は画像認識を得意としており検査工程で利用が進んでいます。
急速に広がっている人工知能について、基本的な部分を一通り学ぶことができる検定です。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
試験方式はオンラインでの自宅受験となり、制限時間内に多くの問題に解答する方式です。
120分で220問出題されますので解答が大変になる試験です。
合格基準は公表されていませんが、60%以上は必要だと言われています。
エネルギー管理士
エネルギー管理士は一般財団法人省エネルギーセンターが実施する国家資格です。
一定規模以上のエネルギーを使用する工場にはエネルギー管理士免状の交付を受けている人をエネルギー管理者として選任しなければならないという必置義務資格です。
半導体工場の多くは電力などのエネルギーを多く使用する工場となりますので、エネルギー管理者を選任する必要があります。
エネルギー管理士は電気分野と熱分野を選択して受験できます。半導体を学んだ方であれば一般的には電気系の方と思われますので、電気分野を選択されるといいでしょう。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
試験は4科目から構成され、すべての科目に合格する必要があります。ただ科目合格制度があり、1度合格した科目は2年間は免除されます。そのため計3年間で4科目合格すれば最終合格となります。
合格基準は各科目60点以上です。
試験の内容が電験3種(第3種電気主任技術者)とかなり重複するため併せて受験することもおすすめします。
危険物取扱者
危険物取扱者は一般財団法人消防試験研究センターが実施する国家資格です。
一定数量以上の危険物を貯蔵する施設には危険物取扱者を置かなければならないという必置義務資格です。
消防法上の危険物はその性質から第1類から第6類までに分類されます。
半導体工場で取り扱う機会が多いのは第4類(引火性液体)と第6類(酸化性液体)です。
そのため乙種4類と6類を取得することをおすすめします。
乙種4類はガソリンなどを取り扱うため危険物取扱者試験の中でもっとも一般的です。
そのため参考書なども多く出回っているためまずは乙種4類を受け、その後乙種6類を受けるといいでしょう。
乙種をどれか1つ合格すると、他の乙種を受ける際に2科目が免除になりますので非常に合格しやすくなります。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。試験は3科目から構成され、各科目60点以上で合格となります。
毒物劇物取扱者試験
毒物劇物取扱責任者は各都道府県が実施する国家資格です。
危険物取扱者と同じく、一定数量以上の毒物または劇物を貯蔵する施設には危険物取扱者を置かなければならないという必置義務資格です。
半導体工場では毒物や劇物に指定される薬品等を取り扱います。
試験は一般、農業用品目、特定品目の3種類ありますが、全品目を扱うことができる一般を選択するといいでしょう。
受験資格は特にないため、だれでも受験可能です。
ただし18歳未満の方やその他の条件に該当する方は合格しても毒物劇物取扱責任者になることができませんので注意が必要です。
試験は各都道府県で実施されており、試験日や受験料は都道府県によって異なりますので、お住いの都道府県HPから確認をしましょう。
衛生管理者
衛生管理者は公益財団法人安全衛生技術試験協会が実施する国家資格です。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者免許を有する者のうちから労働者数に応じ一定数以上の衛生管理者を選任し、安全衛生業務のうち、衛生に係わる技術的な事項を管理させることが必要となっている必置義務資格です。
一般的に半導体工場では50人以上の労働者が働いていますので最低でも1人は衛生管理者が必要になります。
衛生管理者試験は受験資格が定められており、一定の学歴及び職歴が必要になります。
だれでも受験できるわけではありませんので、学生の方は無理で、ある程度の職歴を持った社会人の方が受ける試験になります。
試験は3科目から構成され、各科目の得点が40%以上かつ全体で60点以上取れば合格となります。
まとめ
半導体業界で活かせる資格を9つご紹介しました。
- 半導体技術者検定
- 統計検定
- QC検定
- 情報処理技術者試験
- G検定
- エネルギー管理士
- 危険物取扱者
- 毒物劇物取扱責任者
- 衛生管理者
どんな分野であっても学び続けることは重要です。
これから半導体業界で働きたい方も、既に働いている方も人生100年時代と言われるこのご時世、学び続けて社会や会社から必要とされる人材で居続けることができるよう学び続けましょう!